蜜柑
杉の運営する小説ブログサイトです。食伊とシンジャを愛する杉の妄想吐き出しの場。
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けまい18
ちょっと書き溜めてたものをようやく吐き出し。
久しぶりの更新なのに原稿の合間に書いたから短いです。
月見をするって話です。
話はこちらから↓↓
久しぶりの更新なのに原稿の合間に書いたから短いです。
月見をするって話です。
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たまにはこんな日があってもいいと留三郎は思った。
「いってぇ…」
自主トレを終えて部屋に帰ろうとした時、留三郎は穴に落ちた。
忍術学園内は四年生の喜八郎のせいで、落とし穴だらけだった。それを埋めて回っているのが用具委員である。
だが、埋めても埋めても穴は減らず、留三郎は夜の自主トレをやりながら穴を見つけていた。
昼間ならば下級生達も連れていても対処は出来るけれど、夜だと穴に落ちる以外の危険もある。
それに下級生達の面倒を見ながらよりも、一人の方が探すには効率がよかった。
留三郎は見つけた穴に目印を付けていき、明るくなったら下級生達と共に穴を埋める作業に入るつもりだったのだが…。
(まさか俺が落ちるとはな…)
自分の間抜けさに留三郎からは深い溜息が漏れた。
留三郎はこの大きく開いた穴を見つけた時、目印を付けるのではなくすぐにそれを埋めようと近づいたところで、その手前の穴に落ちたのだ。
奥の穴はよく伊作が落ちる場所で、また落ちられてはたまらないと思った。
でも、伊作は何故かこの場所で穴に落ちる事が多い。
それがずっと不思議だったのだが、顔を上げればその理由はすぐにわかる。
(あいつはこれを見てたのか…)
留三郎は穴の中を見上げて、伊作がここで何を見ていたかを知る。
「綺麗な月だな」
調度この場所は見上げると月が穴の真上に見えるのだ。
きっと伊作は月を見上げながらこの辺りを歩き、穴に落ちるのだろう。
そして、この穴の中から月を見上げて楽しんでいるに違いない。
伊作がこの穴に落ちるのはたいていが夜だから、恐らくそうやって落ちるのは間違いないだろう。
穴に落ちるといつも一人では上がってこれなくて、そのまま一晩を穴の中で過ごしていた。
道具がなければ一人では上る事が出来ない位、穴は深い。
実際、留三郎もそうだ。
かなり深い穴で留三郎が今持っているのはクナイだけ。
自主トレの後で疲れていて更に穴を掘るまでの体力は残されていなかった。
夜は遅いしこの時間に誰かが通り掛かるのは皆無に等しく、夜のうちにここから出る事は難しいだろうと留三郎は思う。少し狭いが一人ならばこの穴の中で寝るのも可能で、留三郎は自分の良い体勢に身体を動かして定位置を決めた。
いつも自分の掘った穴を自負しているだけあって、綾部の掘る穴の内部は綺麗なものだった。
小平太もよく穴を掘っているが、性格が雑ゆえに深く大きな穴を早く掘る事は出来るのだが、綺麗な穴ではない。
ここで夜を過ごす事になる留三郎にしてみたら、綺麗に穴を掘る喜八郎の方でよかったと思う。
とはいっても寝心地は決してよくはない。
それでもこの穴の中は静かで安全なうえ、月が綺麗に見える。
伊作の煎じるきつい薬の臭いもしない。
ある意味安眠出来る場所といえるが、まだ寝るには早くて、留三郎が月を見ながら伊作の事を思い出す。
今、留三郎は伊作と同じ月を見ているのだ。
「伊作ー」
留三郎は穴の中から伊作の名を呼ぶ。
すると、
「何だ、留三郎?」
そうすぐ近くから伊作の声が聞こえた。
どうやら先に開いていた穴に伊作はいるようで、穴が開いていたのは既落ちた後だったからだ。
留三郎は穴の中を見た訳ではないのに伊作がいるとわかったのは、すぐ隣の穴から人の気配を感じたのだ
それに、こんな所に落ちるのは伊作くらいだ。
「穴の中から見る月もなかなかだと思ってな」
「結構、綺麗に見えるだろう?」
この言葉から、伊作が穴の中から何度も月を見ているのだという事がわかる。
「まぁな。だからって穴に落ちてんなよ」
「そっちもね」
笑いながらそう言ってくる伊作に、
「俺は今回だけだ」
と留三郎は言い返す。
だが、留三郎はそれを気にする事なく、
「でもたまにはこんな月見も悪くねぇ」
留三郎はそう言うと月を見て笑った。
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