蜜柑 また君に恋をする(転生現パロ2) 忍者ブログ

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また君に恋をする(転生現パロ2)

1の続きです。
ここから現代になります。


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それではお話はこちらから↓↓



◆   ◇   ◆


昔の夢をよく見る。
でもそれは、幼い頃の夢ではない。
遠い、遠い昔の自分の夢だ。
その夢の中で自分は忍者のたまごで、忍者になる為に忍術学園という学校に入って勉強をしていた。
辛い事もあったけれど、学園内にいる仲間や後輩と共に過ごす学園生活はとても楽しかった。
六年間、保健委員を務め、最上級生となった時には委員長だ。だから医学はかなり勉強した。薬の事なら傷薬から毒薬まで。
でも、今はドラッグストアが至る所にあるから薬など簡単に買える時代だ。医学も進んでいる。
昔は薬草から薬を作っていたし、その知識はまだ覚えている。
今となってはあまり役にはたたない知識となってしまったけれど…。
いつも一生懸命生きていた。
そして、一生懸命に恋をした。
同室だった人に恋をしたのだ。
凄く負けず嫌いで怪我ばかりして、いつもそれが心配だった。
それなのにいつも傍で優しく見守ってくれていた、優しい笑顔の人。
怒る事もあるけれど、でもいつも優しかった。
今でも彼の事をハッキリと覚えている。


『大好きだよ』


その言葉は最後まで彼には届かなかった。


『答えが出たら一番に伊作に言うから。だから忘れないで待っててくれよ』
 

そう自分の想いを伝えると言ってくれた彼からの言葉も未だ届かないまま、生涯を終えた。
けれど、その言葉をずっと待っている。
彼が死ぬ間際に必死に伝えようとしていたのがそれだったのか、今となってはわからない。
それに彼はこんな事は覚えていないだろう。
覚えているのは恐らく自分だけなのだ。
そして、伊作にも伝えられずにいる言葉があった。
それでも彼に伝えたい。
今度こそ気持ちを伝えたい。
だから、今でも彼を探している。
 

今でも大好きで、まだ出会えていない彼に、自分の想いを伝える為に。
 

ねぇ、君は今どこにいるの――――――
 

 

 

 

 


~♪
 

枕元に置いていた携帯が大きな音で鳴った。
時刻は六時半。
ベッドの中から伸びた手が携帯を探し、画面に表示された名前を確認してから電話に出た。
「……もしもし、仙蔵…何?」
『何じゃない。ちゃんと起きてるか?』
「…今起きたよ」
『起きたならいい。二度寝はするなよ。じゃあ、また後でな』
そう言って仙蔵は電話を切った。
仙蔵は伊作の隣に住んでいる幼なじみだ。
同じ高校に入り一緒に登校している。
そして、この仙蔵も伊作の夢に出てくる一人だった。夢の中で仙蔵とは同じ学校に通う仲間であり友達。今のような関係に近い。
 

(世話やきなところは変わらないな…)
 
伊作は夢の中に出てくる仙蔵と今の彼を重ね笑う。
でもこれは夢などではない。前世の記憶なのだ。
伊作には前世の記憶がハッキリと残っていた。
こんな話をした所で誰も信じないだろうから、誰にも話した事はないし、言うつもりもないけれど。
こうやって昔の夢を見た時は、いつもその思い出に浸る。
けれど、そんな事が出来るのは休みの日だけだ。
「起きたくな~い」
気の抜けた声を出し、伊作は自分の熱が残る心地良いベッドに潜り込むのだが、ふと浮かんだのは昔の思い出ではなく、笑みを浮かべながらしつこく小言を言ってくる仙蔵の姿だった。
まだ眠い。
でもこれは自業自得で、夜遅くまでゲームをやっていた事が原因だった。
伊作の通う高校は自転車でニ十分かかる。
自転車で通学するのならば七時半に起きて、それにかかる支度を三十分で済ませれば、十分の余裕を残し学校に到着出来た。
だが、この日は雨だ。
前日に見た天気予報でも雨だと言っていて、降水確率は八十%。
それでも伊作は自転車で行こうとしていたのに、仙蔵が濡れるからとそれを嫌がった。
今月、二人は高校に入学して初めての雨。
初めてのバス通学。
バスは自転車と違って最短距離を行かないし、使った事がないからどの程度の時間で着くかわからない。
わかっているのは、自分達の使う路線は空いているという事。雨だから多少の人は増えるだろうが、それでも余裕で座席には座れる筈だ。
そして、こんなに早く起こされた一番の理由は本数が少ないという事。一本逃せば確実に遅刻をしてしまうのだ。
だから、いつもより一時間も早く起こされ、余裕をもって家を出る事になっている。
もう少し寝ていたかった伊作からすれば早く起きるより、濡れる方を選びたかった。
個別に登校するという選択もある筈なのだが、何故か二人でバス通学という事に気づいたら決定していた。
こんな事ならゲームなどしないで寝ればいいのだが、発売したばかりで早くプレイしたかったのだ。
 

(それにしても早すぎる…)
伊作はもう一度、大きな欠伸をして身体を伸ばしてベッドから降りた。
仙蔵に早く起こされたから、この日は朝食を食べる時間がある。伊作は冷たい水で顔を洗いスッキリさせると、ハンガーに掛けてある制服のブレザーに着替えた。
学校指定の鞄を持ち、二階の自室から出てリビングに行くと…。
「おはよう、伊作」
リビングには既に制服に着替え、コーヒーを飲みながらくつろいでいる仙蔵がいた。
「仙蔵、来てたの…」
「お前が起きなかったら起こしに行こうと思ってな。因みにさっきの電話はここからだ」
仙蔵は当然のようにここにいるが、昔から家族ぐるみの付き合いで、珍しい風景ではない。
「ほら、伊作も早く座りなさい」
朝から朝食を作っていた母親が、ココアを用意して持ってくる。
「お前、相変わらずだな」
「ほっといて」
朝は甘いココア。これがなければ伊作の朝は始まらないのだ。
それと、この日の朝食は食パン、目玉焼き、サラダ。そして、ヨーグルトだ。
仙蔵は伊作がそれを食べ終わるのを、コーヒーを飲みながら待ち、無くなればおかわりする。
「仙蔵は相変わらず、朝はコーヒーだけ?」
「あぁ」
「だから顔色悪いんだよ」
「ほっとけ。それより早く食べろ。あと十分しかないぞ」
「えっ、ウソッ!?」
仙蔵に言われて時計を見ると、伊作は慌ててパンにかじり付いた。普段からあまり食べるのが早くない伊作にとって、十分というのはかなり厳しい時間だった。
そして、家を出る一分前から仙蔵のカウントダウンが始まった。
仙蔵は時間には厳しい。カウントが『ゼロ』になる前に席を立ち、朝食が途中だろうが引きずって行く。仙蔵のカウントが『ゼロ』になったら家を出るのだ。
そして、この日はヨーグルトまでたどり着けずに、伊作は仙蔵に引きずられるようにして家を出た。

 

 

この日は弱い雨。
けれど、雨は夜中から降っていたから、所々に水溜まりがあった。二人はそれを避けながらバス停に向かう。
バス停までは歩いて三分。
二人はバスが到着する五分前にバス停に着いた。
「あと一分待ってくれたらよかったのに」
「その一分でバスに乗り遅れたらどうする?」
「そうだけどさ、まだ来てないじゃないか」
伊作はバスの来る方に視線を向けると、到着時間前なのにバスが現れる。
「あと一分か。待っていたら乗り遅れてたな」
「う…」
仙蔵は言い返せない伊作に向かって、フッと笑い停車したバスに乗り込んだ。
確かに仙蔵と共に家を出なければ、このバスには乗れなかっただろう。それはわかってはいるのだ。
 

でも…


(素直に感謝出来ないのは何故だろう…?)
 

そんな事を思いつつ、伊作も続いてバスに乗り込んだ。
バスは雨の日にも関わらず空いているが、いつもよりは多少人が乗っている気がした。自転車で通学していると、学校の少し手前でバスとかち合うのだ。外から中を見るといつもニ、三人しか乗っていないのだが、今日は自分達をあわせても十人程度で、席も十分空いている。
更にバスの中に居るのは全員同じ学校の生徒で、それ以外は乗っていないし、伊作の知り合いはいなかった。
だが、仙蔵が一番後ろの端で本を読む眼鏡の男に声をかけた。
「何だ、お前も今日はバスか?」
男は一度視線を上げ、そしてまた本に視線を落とした。
「俺はいつもバスなんだよ」
「ほう」
まだ、入学して日が浅いというのに、仙蔵は親しげに話していた。
そして、親しく話す彼の前の席に仙蔵が座り、伊作もその隣に座る。
「仙蔵、知り合い?」
伊作と仙蔵はクラスが違う。彼は仙蔵のクラスメートなのか。
「あぁ、同じクラスの食満だ。食満留三郎。こっちは善法寺伊作。私の幼なじみだ」
「どうも」
食満と紹介された男は顔を上げ、伊作に一言挨拶をしてくる。
「食満…留三郎…?」
伊作は名前に驚き、その姿に驚いた。
彼な伊作の夢の中に出てくる一人なのだ。
そして、ずっと思い続けている人。
伊作は留三郎から目が離せなかった。ずっと探し続けていた彼が、今、目の前にいるのだ。
「伊作?」
異変に気づいた仙蔵が声をかけ、その声で我に返った伊作は『何でもないよ』と笑ってごまかした。仙蔵はそれに納得いってなさそうだったけれど、その理由を話す事は出来ない。
前世から好きだった人が目の前に現れた、と言って誰が信じるというのだ。
それに、留三郎はきっと覚えていない。名前を聞いても、顔を合わせでも反応がなかった。
 

(あぁ、やっぱり君は何も覚えていないんだね)
 

でも、彼は確かに伊作の好きになった留三郎だった。
本当に懐かしい。声や話し方も昔のままだ。以前から本が好きで、図書室で借りた本を寝る前にいつも読んでいた。
記憶も消え、もう別の人生を歩んでいるというのに、『食満留三郎』なのだ。
でも、やっと出会う事の出来た留三郎に、伊作は緊張して何も喋れなかった。伊作は人見知りもないし、偶然にも留三郎は仙蔵のクラスメートで知り合いにもなれた。
それなのに挨拶すらまともに出来ないのだ。
いつものように笑顔で、『よろしく』と挨拶すればいいのに、頭の中は真っ白になってしまった。
そして、今まで抱えていた思いが一気に溢れてきて、目頭が熱くなって涙が溢れた。
「おい、伊作…?」
泣いている伊作に気づいた仙蔵が声をかけてくる。
「大丈夫…」
「大丈夫には見えないぞ?」
「本当に大丈夫だから」
伊作は笑おうとするのだが、涙しか出てこなかった。
すると、急に頭を撫でられて顔を上げると、その手は留三郎だった。
「よくわかんねぇけど、大丈夫か?」
「……うん」
伊作はそう答えたけれど、更にさっきより酷く泣いた。
それを見た留三郎も仙蔵も驚いて慌てていたのはわかっていたのに、伊作は涙を止める事が出来なかったのだ。
『大丈夫だよ』と泣くのを止めて笑えばよかったのに出来なかった。
 

変わらない留三郎がそこにいる。
 
それが嬉しくて、伊作は暫く涙を止める事が出来なかった。
伊作は雨の日が好きではなかった。
バスに乗るから早起きしなければならないし、重たい空気にどこか憂鬱だった。
伊作のクセのある髪は湿気で纏まらないから、膨らんだうえ、いつもどこかが跳ねてしまう。
朝から上手くいかないから嫌なのだ。
晴れの日ならば自転車を使う。自転車なら学校へは二十分で着くし、天気のいい日に風をきって走るのは気持ちがよかった。
そして何より、ギリギリまで寝ていられる事がいい。だから自転車で通える学校をわざわざ選んだ。伊作にとってどれだけ長い時間、寝ていられるかが重要だった。
長く寝る為なら雨の日でも自転車で通いたい。
そう思っていたのに…。


(明日は曇りのち雨か…)
 

寝る前に夜のニュースを見るのが伊作の日課だ。と
いっても見るのは天気予報だけ。
明日の天気は曇りのち雨。天気予報によると、丁度下校時間に雨が降る。
伊作は携帯を取り電話をかけた。
「もしもし、仙蔵?」
『伊作か。何だ?』
「明日の天気、曇りのち雨だよ。帰りに降りそうだから僕はバスで行こうと思ってるんだけど。仙蔵は?」
『私は勿論バスだ。でも、お前がバスなんて珍しいじゃないか。帰りは濡れてもいいんじゃなかったのか?』
「気が変わったんだよ。じゃあ、明日は寝てるかもしれないから起こしてね」
『はいはい、わかったよ』
「じゃあ、また明日ね」
『また明日』
要件のみの電話で伊作は電話を切った。
曇りのち雨。
いつもなら仙蔵に自転車で行くと伝えていた。帰りなら濡れてもすぐに風呂に浸かって身体を温めればいい。
仙蔵は雨の確率が少しでもあると絶対にバスに乗るから、こういう日は別々に登校する。
 

(でも、雨の日は留三郎に会えるから…)
 

隣のクラスだから廊下ですれ違う事はよくある。仙蔵と仲がいいみたいで、よく二人で話をしている姿を見かけた。留三郎はすれ違えば伊作にも挨拶をしてくれる。
でも、それだけだった。
留三郎は伊作の事を『仙蔵の友達』という認識でしかなくて、とても寂しかった。仙蔵が羨ましくて仕方がなかった。
前世なら留三郎の隣にいたのは自分だったのだと、明らかな嫉妬をしてしまう。
前の記憶があればこんな事にはならないのに、留三郎にも仙蔵にもそれがない。
「これはこれでキツいな」
伊作はベッドに倒れ込んで顔を埋めた。
すぐ隣にいた彼が今はいない。
探して、探して、やっと見つけたのに、まだ遠いのだ。
留三郎と出会ってからはずっと、彼との思い出を思い出していた。
自分でも焦っているのがわかる。
早く前みたいになりたいと。
伊作は今を昔の思い出に近づけようとしていた。
昔みたいにその日あったたわいない話に盛り上がって笑う、そんな関係になりたかった。
そして、彼に伝えられなかった言葉を伝えたい。
「あと三年!」
伊作は勢いよく顔を上げて起き上がる。
これから雨の日はいくらでもあるし、クラス替えもあるのだ。
もしかしたら留三郎と同じクラスになるかもしれないと、伊作は自分にそう言い聞かせてそのままベッドに潜り込んだ。

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