蜜柑 爪【シンジャ9】 忍者ブログ

蜜柑

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爪【シンジャ9】

マニキュアを塗るというのを書きたかったのです。

ジャーファルさんにマニキュアって私似合うと思うのですよ。

という妄想しながら書きました。


それではお話はこちらから↓↓




「綺麗な色の爪だね」
宴の席で膝に乗る踊り子の爪に目を奪われ、気づけば手を取っていた。
色は鮮やかな赤色。
「ふふ、そう言っていだけると嬉しいですわ。今流行っているマニキュアで、塗った後花の香りがしてとても人気がありますのよ」
言われて香りを嗅げば、ほのかに花の香りがした。
「あぁ、とても良い香りだね」
そう笑顔で匂いを香ると、シンドバッドを囲む踊り子達は、私もと主張は始めた。
そして、色とりどりの爪を見せてくる。
どれも鮮やかな色の爪で、青、緑、黄と、とても華やかだ。
女性は華やかなのがいい。
いつもシンドバッドはそう言っている。
だからなのか、彼の周りにいる女性は皆鮮やかな色を身に纏っている。
それは衣装だけではなく、爪や装飾品も同様だった。
だが、装飾品など高価な物を揃えるのは難しい。
だから踊り子達の間ではマニキュアが流行っているようだった。
気分や服に合わせて色を変える事も出来るし、塗るだけで華やかさが増すのだ。
価格も手頃だと、女達の間で人気の品で、新しい色が出るとすぐに品切れになるらしい。
最近、また新しい今までては違うのが入ったのだと、前にピスティが騒いでいたのを思い出す。


(これの事だったか…)


今ではかなりの色も発売されていて、最近では香りのある物まである。
こういう物にはあまり興味のないシンドバッドは、女性の流行にはまるでついていけていなかった。
それでも、綺麗だと感じる事は出来る。
女性が付けると尚更美しい。
だが、今回色んな色を見たけれど、やはり気に入ったのは赤色だった。
それはいつも身近にいる子を思い出すからだ。
マニキュアではないけれど、その子も同じような鮮やかな赤を身に付けている。
シンドバッドにとって赤はその子の色だった。
「王様はこの色がお気に入りですか?」
赤い爪の踊り子がそう耳元で囁くように聞いてくる。 
「あぁ、色も香りも俺好みだな」
シンドバッドがそう言えば、周りの踊り子達も『私もその色にしようかしら』と騒ぎ出した。
女達が騒ぐのはやはりいい。
見ていて飽きない。
自分の膝の上や、その周りで騒いでいるのがまた楽しい。
だが、楽しくはあれど、そこに特別は存在しなかった。
シンドバッドの特別は別にある。
その子にこのマニキュアを贈ったら、どんな顔をするだろう?
怒るか。
それとも呆れるだろうか。
気にいって自分から付ける事はしないだろうが、怒るにしろ、呆れるにしろ一度は付けてくれると思うのだ。
手の爪に塗ると見えてしまうから、足の爪に塗れば問題はない。
それも、出来れば塗ってやりたい。
そんな事を考えていると、
「思い出し笑いですか?やだ、いやらしい」
と踊り子達が笑う。
シンドバッドも踊り子達と笑い酒を飲んだ。酒の席ならそんな事を言われる事すら楽しいのだ。
だが、楽しい時間はあっという間に終わってしまう。
「シンドバッド様、もうそろそろ宴は終いですよ」
ジャーファルがシンドバッドにそう告げる。彼の事だろうからぴったりその時間なのだろうが、やはりまだこの空気を味わっていたかった。
「あと少しいいだろう?」
「駄目です!明日の朝議に響くでしょう?ほら、あなた達も」
ジャーファルに言われて踊り子達も渋々シンドバッドから離れていった。
でも、離れた踊り子の一人が暫くすると戻ってきて、シンドバッドの手を握る。
「新しい物が一本あるので差し上げますわ」
彼女が握らせたのは赤いマニキュアだった。
「ありがとう」
シンドバッドは礼を言って、彼女の手の甲にキスをする。それにうっとりとした表情を浮かべるが、ジャーファルの目もあるからか足早にそこから立ち去った。
今、この場に残っているのはシンドバッドとジャーファルの二人だけ。それと、女達の残り香だ。
「ジャーファル、酔い醒ましに付き合え」
「私には酔っているようには見えませんよ」
「いいから」
シンドバッドはジャーファルの手を引き、連れて行くのは紫獅塔にあるシンドバッドの自室だ。
そして、ジャーファルをベッドに座らせると、シンドバッドもその向かいに椅子を持ってきて座った。
きっと何かをされる。それもロクな事ではない。
そう感じたジャーファルは既に呆れ顔だ。
「シン、貴方がそういう顔をする時はロクな事を考えてない時です」
「そういう顔?」
「そうですよ。こう口の端がつり上がるんです」
ジャーファルはシンドバッドのつり上がる唇にそっと触れた。
触れてくる指先。 
その指を今度はシンドバッドが舐める。
「シン」
「あぁ、スマン。本題はこっち」
シンドバッドは懐から小瓶を取り出した。それはさっき踊り子の女から貰った物だ。
「これは?」
「マニキュアだよ。塗ると花の香りがするんだ」
そう説明をして、シンドバッドはジャーファルの足を取り、靴を脱がせた。
「シン、何を?」
「塗るのさ。お前に似合うと思ってな」
「嫌ですよ、マニキュアなんて!」
「だから手じゃなくて見えない足に塗るんだ。それでも駄目か?」
シンドバッドはジャーファルの足にキスをする。
「あーもう…足にキスなんて止めてください。これの意味はわかっているでしょう?」
「知っているよ、絶対服従だろ。でも俺はいつもお前の言う事はきいているじゃないか。たまには俺の言う事もきけよ」
「言う事をきいているというのなら、サボらず真面目に仕事をしてください。仕事をするなら私も素直にききますよ」
「ははっ、それは耳が痛い。でも宴の日位、素直に俺の我が儘を聞いてくれてもいいじゃないか」
そう言ってシンドバッドは笑うが、ジャーファルはもう呆れ顔だ。


いちいちアンタの言い分聞いていたら仕事が溜まる一方だろ?


そう言いたいに違いない。
顔を見ればジャーファル の言いたい事はわかる。
でも、その呆れ顔は次第に諦めに変わり、ジャーファルからは深いため息が漏れた。
「それで私に大人しくマニキュアを塗れと?」
「塗るのは俺だがな」
「嫌だと言っても塗るんでしょう?」
そう聞けば、シンドバッドは勿論と大きく頷いた。
結局、最後にはこのパターンだ。
例え嫌がろうとジャーファルに拒否権などなかった。 
それがわかっていて言ってくる。
否定が肯定になるのを笑顔で待つのだ。
その表情がとても腹立たしい。
余裕な顔しやがってっ!とジャーファルは眉間にシワ寄せた。でも、悔しいが勝てない。
「もうお好きになさってください」
ジャーファルは諦めて抵抗は止めた。
すると、シンドバッドはまた足の甲にキスをして、新品の瓶を開けた。


いつもなら二人きりでいる時は、何かしらの話をするのだが、今は静まり返っていた。
理由はシンドバッドに話をする余裕がないからで、真っ赤なマニキュアがはみ出さないよう、真剣に作業をしているのだ。
普段の仕事もこれくらい真剣にやってくれればいいのに、とジャーファルは深くため息をつく。
「シン…」
「黙ってろ」
たまに話し掛けても黙ってろしか言わず、ジャーファルは動く事は勿論、話す事も許されなかった。 
「まだですかー?」
「………」
しつこく話しかければ無視される。まるで子供のようだと思う。
とにかくシンドバッドは真剣だった。
ジャーファルが暫く黙って見ていると、シンドバッドは一息ついて、
「出来た!」
と満足そうな声が上がる。
「綺麗に出来ました?」
「うん。あ、でも塗ったばかりだから動くなよ」
「はいはい」
ジャーファルは細心の注意を払い、自分の足の爪を見た。
はみ出す事なく塗られたそれはとても綺麗だった。
男の、それも自分の爪だけれど、綺麗に思えた。
鮮やかな赤。
自分の腕に巻かれた紐と同じ色だ。
「よく似合っているよ、ジャーファル」
「似合っているかはわかりませんが……、綺麗だと思います」
ジャーファルは膝を抱え、シンドバッドに笑みを向けた。
そして、すぐに立ち上がると靴を持ち、ドアの前に立つ。
「戻るのか?」
ジャーファルは靴を小脇に抱え、手を前に組む。
「はい、明日の朝議の準備もありますので。それでは我が王、よい夜を」
部屋を出たジャーファルは靴ははかず、裸足のまま自室へと戻った。




朝、いつも通りの時間に起床をしたジャーファルは、すぐに違和感に気づいた。
いつもはしない花の香りがするのだ。
その原因は間違いなく昨夜、シンドバッドに塗られたマニキュアのせいだ。 
でも、匂いなど誰も気にしないだろう。執務室はインクの臭いが充満しているのだ。
気にせず靴を履き、いつも通りに朝議に向かうと、ドラコーンが既に席に座っていた。
これはいつもの風景だ。大概、ジャーファルかドラコーンが最初に来るのだ。
その後にスパルトス、ヤムライハ、ヒナホホと続き、それから暫く空いてシャルルカンとピスティが入ってくる。
マスルールは来る時と来ない時が有り、ジャーファルはそれにいつも頭を抱えていた。
そして、酒を飲んだ次の日のシンドバッドは朝議ギリギリにやってくる。
だが、この日はシャルルカンとピスティの前に来たから、あれから酒を飲まずに寝たようだ。
後はマスルールのみで、全員が揃うまでは皆で雑談をするが、ジャーファルは朝議で使う資料を揃えたりと忙しい。雑談をしている時間はないのだけれど、ピスティがジャーファルに寄ってきた。
「ジャーファルさん、今日いい匂いがするー」
「……気のせいです」
「でも私、この匂い知ってますよ。今流行ってるマニギュぅ……」
途中で言葉を遮るように、ピスティの口を押さえた。
これ以上喋るなと言わんばかりの表情で圧力をかけた。
そして、更に追い打ち。
「黙りなさい」
この一言でピスティは黙り、この日はとても大人しかった。


だが、次の日には、『ジャーファルさんはマニキュアの甘いお花の香りがする』と広まっていて、それを聞いたジャーファルの怒鳴り声が、宮殿内に響き渡るのだった。

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