蜜柑 シンジャ8 忍者ブログ

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シンジャ8

原稿の合間に書きました。
長い話書いてると集中力が途中で切れます。
しかし、こんな短い話を書くにも数日かかってしまうとか、さすがに遅すぎる・・・。
5日くらいかかってる気がします。
時間欲しいというか時間はある。
ただ、一人でゆっくりする時間がないというだけ。


で、コレのタイトルは「泣き虫な王様」です。
珍しくタイトルが思い浮かんだのですが、とりあえずタイトル通りです。



それではお話はこちらから↓↓



この人はとても心配性ですくに泣く。
その原因は自分にあるのだけれど…。

 

「大丈夫か、ジャーファル」
ジャーファルは傷を追った。命に別状はないが、かすり傷という訳でもない。
気づいたらベッドの上で、少し視線を横に移せばシンドバッドが心配そうに見つめていた。
「……大丈夫、これくらい」
そうは言っても少しでも身体を動かすと全身が痛かった。
それでも無理に手を動かして、シンドバッドに触れた。何故そうするのかと言うと、シンドバッドが心配そうにこちらを見ていたからだ。
心配しているのがわかるから、少しでも安心させてやりたかったのだ。
「あぁ、そうか。ならいい…」
シンドバッドはジャーファルの手を握り、その手に額を当てた。今、シンドバッドの顔は見えない。
けれど、ぽたり、ぽたりと零れる涙がジャーファルの手を伝う。
 

(あぁ、また泣かせてしまった…)
 

心配させまいと取った行動も無駄に終わり、結局彼を泣かせてしまった事にジャーファル酷く落ち込んだ。
「泣くなよ。俺、生きてるんだから。だから、そういうのは死んだ時とかに…」
「何で?嬉しいから泣いてるのにか?」
「え?」
ジャーファルは一瞬言葉を失った。
ずっと悲しんでいるものだと思っていたのに、自分の思っていた事と真逆を言われて驚いたのだ。
「そうだよ。だってお前はちゃんと生きてる。生きて俺の元に戻ってきたんだから、こんなに嬉しい事はないだろ?だから今は嬉し泣きなんだ」
シンドバッドはそう言って泣きながら笑った。
ジャーファルはシンドバッドの泣き顔を見るのが嫌だった。自分を思ってくれるのは素直に嬉しくはあったけれど、出来る事なら笑っていて欲しい。
例えそれが嬉し泣きだったとしても、その前に彼がとても悲しんだ事は事実なのだ。
「今までのは全部嬉し泣き?」
「そうだよ」
「悲しい事で泣かないの?」
「あぁ、泣かない」
 「じゃあ、俺が死んでもシンは泣かない?」
ジャーファルは自分を思って泣いて欲しくないのだ。
そんなふうに大事に思ってくれる事は嬉しいけれど、自分はそう思われる立場にいてはいけないとジャーファルは思う。
それは、いつでもシンドバッドの為に命を捨てる覚悟をしているからだった。
泣かれたら決心が鈍る。
シンドバッドは優しい。悲しむなとは言わない。
でも、自分の為に涙を流す事はしないで欲しい。 それがジャーファルの願いだった。
だから、自分が死んだ時の事を聞いた。死ぬ間際に見る顔がシンドバッドの泣き顔なんて絶対に嫌なのだ。
「…お前が死んだら、きっと一生分の涙を使ってしまうな」
「悲しい事で泣かないって言ってなかった?」
「ははっ、だから死ぬなって事だよ。わかったか、ジャーファル」
シンドバッドはジャーファルの髪をふわりと優しく撫でた。
「……わかった、誓うよ。ならシンも誓って。これからは俺を思って泣かないと」
ジャーファルはシンドバッドに手を伸ばし、流れる涙を拭いた。
キラキラしていて、とてもキレイな涙。
でも、泣き顔は見たくないから…。
するとシンドバッドは目を閉じ、ジャーファルの手をまた額に持って行く。
「あぁ、誓うよ」
シンドバッドはジャーファルにそう誓った。
 


二人は昔、誓いを交わした。
まだ、シンドリアという国が出来る前の事だ。
随分昔に立てたものだが、まだその誓いは破られていない。
ジャーファルは生きて、今もシンドバッドを支えている。
シンドバッドも泣く事はなくなった。
でも、相変わらず心配性な所は変わらない。
「シン様、私はもう大丈夫ですから、お戻りください。でないと公務に響くでしょう!?」
この日、ジャーファルは傷を負った。
外交の為、シンドバッドと共に国を出て、ようやく帰ってきたと思ったらこの有り様だ。
シンドバッドは民からの信頼は厚い。国土も小さく、特別豊かな国ではないが、皆に愛されている事は確かだ。
シンドバッドが市街地に姿を表せば皆が、『シンドバッド様』と笑顔を向けるのだ。
そして、この日もそうだった。
 

『シンドバッド様だ!』
 
『王様が帰ってきた!』
 

数ヶ月ぶりに帰ってきた王を民達は笑顔で迎えた。シンドバッドはそれに手を振り応えながら王宮に向かい、ジャーファルもそれについて行動をしていた。
すると、少年が1人花束を持って現れた。
花束といっても自分で摘んだ物を纏めただけのものだ。
「…シンドバッド様」
少年はその花束をシンドバッドに差し出した。笑顔もなく少し異様ではあったものの、シンドバッドは何の躊躇もなく花束を受け取ろうとしている。
ジャーファルも最初はそれを見ていただけだったのだが、少年の持つ花束に違和感を感じたのだ。
「シンッ!」
気づくとジャーファルはシンドバッドの前に立ち、花束を払っていた。
地に落ちた花束はカランと音をたてて落ちる。
 

(子供だと思って油断した…)


見れば花束の中にナイフが隠されていたのだ。
逃げようとする少年をジャーファルは自分の武器の紐を絡ませ捕まえると、そのまま引きずって連行する。
例え相手が子供であっても、シンドバッドに刃を向ける者には容赦しない。
「ジャーファル、大丈夫か?」
「はい。かすり傷ですよ」
ナイフを払った時についた傷だ。
だが、これがいけなかったのだ。
王宮に着き、少年を警備兵に引き渡した所で、ジャーファルの意識が途絶えた。
そして、次に目を覚ますと目の前にシンドバッドがいた。
「公務?今日の分はお前が寝てるうちに終わらせた」
「……本当ですか?」
「お前なー、外見てみろ!倒れてから何時間経ってると思ってんだ!」
そう言われて外を見れば、明るかった空は既に暗い。
「……そんな…。で、では私はすぐ仕事に…」
やるべき仕事はたくさんあった。シンドリアに帰る前に、この日片付ける仕事の予定をたてていたのに、倒れてしまったせいで一つも片付いていなかった。
「バカッ!今日はもう休め!」
「しかし…」
「しかしじゃねえ。あのナイフには毒が塗ってあった。もう毒は抜けただろうが、今日は安静にしていろ。それにしても、お前は子供相手だと甘いな。こんな傷を付けられるなんてな」
「…すみません。ご心配おかけしました。もう私は大丈夫ですから、シン様は自室にお戻りください」
でも、シンドバッドは戻らずにジャーファルの傷ついた手を両手で優しく包み、額に当てた。
「……泣いてます?」
「泣いてねぇよ、約束したからな。でも、お前が傷つくと俺は悲しい」
シンドバッドの声は少し震えていた。
涙を流す事はしなくても、悲しんでいる事は確かなのだ。
「ごめんなさい。次からは気をつけます」
ジャーファルはそう言って、シンドバッドの髪を優しく撫でた。

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