蜜柑
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シンジャ4
長い話は紙媒体で読みたいです。
オンラインは目が疲れるので。
だからそのうち本出そう・・・
と言ってみる。
お話はこちら↓↓
シンドバッドがテラスに出ると、アラジンとアリババの声が聞こえてくる。
お互い今は修行中なのだ。
その声を聞きながらシンドバッドはテラスから見える街並みを見下ろした。
街の先には海が広がっている。
ここは海に囲まれた小さな国、シンドリア。
小さいけれど、活気に溢れた国だ。
だが、この国は多くの犠牲のもと成り立っている。
そんな事は街に暮らす者は知らず、力に溢れた王と、それを取り巻く八人将達を信じ、今を平和だと思い込み生きているのだ。
犠牲の上に成り立ったこの国が、いつまで平和でいられるだろう。この先、更に大きく深い闇に飲み込まれるのではないか。
そして、その闇に飲み込まれた時、自分は次に何を犠牲にするのだろう。
そう考えるとシンドバッドの胸は軋むように痛んだ。
目的の為、最初に自分を犠牲にしたというのに。
(まだ痛むのか…)
何を犠牲にしようと、もう心を痛める事はしないと決めたのにだ。
それでもシンドバッドは街を見下ろし続けた。
その表情はアラジンやアリババに見せる時のような柔らかなものではない。戦いの時に見せる険しい表情だった。
弱音など吐いている暇はない。今まで犠牲にしてきたモノの為にも、シンドバッドは立ち止まる事は出来なかった。
そして、この国から目を逸らす事も許されないのだ。
シンドバッドはフッと短い息を吐くと、椅子に座り机に顔を伏せた。
すると、扉が二回叩かれる。
「失礼します」
部屋に入ってきたのはジャーファルで、シンドバッドは顔を少しだけ上げて笑って見せた。
「……何かあったんですか?」
上手く笑顔を作って見せたのに、ジャーファルは何かを感じ取ったらしい。
「何もないよ、今の所はね」
「じゃあ、何でそんな辛そうな顔をするんですか?」
ジャーファルは机を挟んだ向かいにいるのだが、そこから手を伸ばし、シンドバッドの頬に触れた。
上手く笑ったつもりなのに、いつもジャーファルには隠せない。どんなに上手く笑顔を作っても、そこにある違和感を見逃さないのだ。
「ジャーファルにはすぐにバレてしまうな」
「それがわかっているなら嘘などつかないでください」
「……そうだな」
そう言ってシンドバッドはジャーファルに真っ直ぐ視線を向けた。
「ジャーファル、俺はこの先も沢山の犠牲を払う事になる。国を治めるって事はそういう事だから。汚い大人の世界だよ。でも、この国の人間はそれを知らない。何も知らずに慕っているんだ。そして、アラジンやアリババ君も。アリババ君を見ていると昔の自分を思い出すよ。何も知らずに、ただ一生懸命頑張ればどうにかなるって信じてた頃の若かった自分だ。キラキラしてて、今はもう眩しすぎて見ていられないほどに」
「そうですね」
ジャーファルは静かに答える。
「なぁ、ジャーファル。こんな俺を知ったら、皆はどう思うだろう。軽蔑するか?俺の元から去って行ってしまうかな?」
希望を持っている人間の目はキラキラと輝き、力が満ち溢れている。
アリババはその光が一際眩しいのだ。
それは昔、シンドバッドが犠牲にしたものの一つである。
既に無くしてしまった光。凄く羨ましく、心地良い光だった。
でも、もう取り戻す事は出来ない、光。
そして、その光に惹かれ、人は集まるのだ。
だが、今のシンドバッドにはそれがない。
だから、自分の周りにいる者が一人、二人と去っていき、気づいたら周りに誰も居なくなってしまうのではないかと、思う事があるのだ。
一人でもやり遂げると決めたものの、やはり一人になるのは怖い。
「シン、私にもそれはわかりません。ですが、例え全ての者が貴方に刃を向けようと、私は絶対に隣にいます。どんな事があろうとも最期まで」
ジャーファルは自分の前で手を組み、シンドバッドの前にひざまずいた。
「うん。お前がいてくれるならいい」
シンドバッドはひざまずくジャーファルの前に立ち、クーフィーヤの上から頭に触れ、満足そうに笑った。

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