蜜柑 シンジャ1 忍者ブログ

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シンジャ1

しぶにあったの持ってきました。

シン様素敵!


書いてみたら書きやすかった。


お話はこちらから↓↓



いつからこんな気持ちになるようになったのだろう。
最初は何とも思っていなかった。
彼は殺さねばならない相手。
ただそれだけだったのに――――――


深夜。
紫獅塔のジャーファルの部屋に、小さな明かりが灯っている。
そして、机の上にはこの日終わらなかった仕事が山積みになっていた。少しでも片付けようと、ジャーファルは仕事を自室に持ち込んでいたのだが、数時間座りっぱなしで流石に疲れが出てしまった。
ジャーファルが一息入れようと立ち上がり、大きく伸びをした所で、部屋の扉が二回ノックされる。
「はい」
こんな真夜中に部屋に来るなんてと、内心では文句を言いながら扉を開ければ、そこにはシンドバッドの姿があった。
「ジャーファル、時間はあるか?」
「ないです」
容赦なく申し出を断るジャーファルに、シンドバッドは顔を一瞬ひきつらせるが、
「そうか、なら少し付き合え」
シンドバッドはそう言って、半ば強引に部屋の外に連れ出した。
そして、クルリとジャーファルに背を向けて歩き出した。
その背中がついて来いと言っているのだ。
 

(そんな時間どこにもないだろっ!)
 

そう思うものの、返事を待たずに歩き出すシンドバッドの後ろを、ジャーファルは着いて歩く。
今、紫獅塔にいるほとんどが寝ている。
まだ皆の起きている時間ならば灯りも点いているのだが、今は全てが消えていた。
だから今はシンドバッドの持つ小さな灯りだけが足元を照らす。
そして、カツンカツンと二人の足音が響いた。
部屋を出たけれど行き先も理由も聞かされず、ただ何処に向かっているのかもわからない。
それを知っているのはシンドバッドだけ。
すぐ仕事に戻るつもりだったのに、これではいつ戻れるかわからなかった。
ジャーファルはフッと短い息を吐いた。
「どうした、ため息なんかついて」
考えれば誰でもわかりそうな事を聞いてくる。
「仕事が忙しいんです…」
言った所でシンドバッドに付き合うという現状は何も変わらない。
だから、そう言っている先から、深く長い溜め息が漏れた。
「あぁ、知っているよ」
「誰のせいだと思ってるんですかっ!」
「ははっ、それを言われると耳が痛いな」
などとシンドバッドは気楽に笑っている。彼はよく仕事をサボっている。
この日も恐らく仕事時間よりも、休憩時間が長いのだろう。
この国の王として、彼にはやらなければならない事が山ほどある。
だが、王として他国へ出向く事もある。
これもシンドバッドの大事な仕事の一つなのだが、そうやって国を空ければ国内の仕事は溜まっていく一方だ。ジャーファルもシンドバッドの仕事の中に自分でも出来る事があればとそれらを引き受けていたら、寝る暇すらまともに取れない程の仕事量になってしまったのだ。
「………シン、本当に仕事が溜まってるんです」
ジャーファルは歩を止めた。
これ以上、こんな事をしていたら本当に終わらないのだ。
最近、ジャーファルは寝る暇もない程忙しい。ほんの少しだけ休憩を取り、大きく伸びをしたり首や肩を回して身体を動かして、また仕事に戻るのだ。この程度では身体は解れないけれど仕方がなかった。
でも、仕事は好きだから全く苦にはならず、この日もいつも通りに仕事をこなす筈だったのに…。
「シン!」
前を歩くシンドバッドを呼ぶと、彼も歩を止めて振り返る。
「仕方ない。なら戻るか」
シンドバッドの申し出を断っているのに、彼は全く気にしない様子で、今度はもと来た道を戻り始めた。
「邪魔をして悪かった」
「そうですよ、まったく…。一体何なんですか?」
人の返事を待たずに連れ出したかと思えば、文句を言えばすぐに帰る言う。
だが、これでは本当に時間の無駄だ。
「酷く疲れた顔をしていたから、気分転換に風にでも当たりに行こうと思ったんだが…」
シンドバッドは『フラれてしまった』と続け苦笑し、 ジャーファルの頬に触れた。
「風に当たるのなら部屋でも出来るじゃないですか!」
「じゃあ、窓を開けると紙が飛ぶと怒るのは誰だ?」
ジャーファルは言い返せずに言葉に詰まる。
「大丈夫、もう邪魔はしないよ」
シンドバッドはジャーファルを部屋まで送り届けると、すぐに自室へと戻ろうとした。
けれど、戻ろうとするシンドバッドの袖を掴み、ジャーファルはそれを止めた。
「ジャーファル?」
咄嗟に掴んでしまったのだ。
「あっ…」
すぐに袖を離したけれど、何となく気まずくて…。
シンドバッドは少し驚いたような顔はしていたけれど、すぐにその表情は柔らかいものに変わって、ゆっくりと伸びてきた優しい手紙が、ジャーファルの頬を撫でた。
「おやすみ、ジャーファル」
自室はそう耳元で囁き、ジャーファルの髪に唇を落とした。
「……おやすみなさい」
ゆっくりと、静かに閉じられた扉。
ジャーファルは暫くその扉を見つめていた。
遠ざかっていく足音。
辺りは静かになっていくのに、自分の心臓だけはバクバクと煩い。
 

(治まれ 治まれ 治まれ 治まれ!)
 

服の上から胸を掴み、ジャーファルはしゃがみ込んで身体を丸めた。
 

(寒い…)
 

窓も開いていないのに肌寒さを感じる。
ジャーファルはシンドバッドが居なくなってから、急に肌寒いと感じた。
 

あの人がいると暖かい。
 

そして、落ち着く。
 

居心地が良かった。


シンドバッドと初めて出会った時には、まさか自分がこんな事を思うようになるとは思わなかった。
 

けれど、これでは―――――
 

「仕事が進まない…」
ジャーファルはベッドに倒れ込み、静かに目を閉じた。


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