蜜柑
杉の運営する小説ブログサイトです。食伊とシンジャを愛する杉の妄想吐き出しの場。
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けまい28
19期最後の話でテンション上がってすぐに書き始めたのに、気付けばこんなに時間がたってるし・・・。
それも自分的に盛り上がってきてしまって、これの続きはオフで書きたいなーという感じで、ちょこちょこ書いてます。
出るとしても来年なのでゆっく~り。
ただ、イベント申し込みしても参加出来るかわからないのでどうなるんだろう?
うわーーーんっ!
イベント行きたいいぃぃぃぃ~~~!!
で、今回の話を書いたのがきっかけでカテゴリーを一つ増やしました。
発行物と繋がってる話をここにはアップしていこうと思ってます。
それではお話はこちらから↓↓
それも自分的に盛り上がってきてしまって、これの続きはオフで書きたいなーという感じで、ちょこちょこ書いてます。
出るとしても来年なのでゆっく~り。
ただ、イベント申し込みしても参加出来るかわからないのでどうなるんだろう?
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で、今回の話を書いたのがきっかけでカテゴリーを一つ増やしました。
発行物と繋がってる話をここにはアップしていこうと思ってます。
それではお話はこちらから↓↓
『同室だから』
何度、この言葉を唱えただろう。
何度、そう言って伊作に手を貸しただろう。
それは、留三郎が伊作と同室になった時から始まっている。
一年の時から同室で、六年の今まで同室で過ごしているから、もうこの生活も気づけば五年以上経つ。
一年のある日、伊作が演習中に泥にはまって動けなくなっているのを見つけた時、どうしても放っておけなかった。
この時初めて留三郎は手を差し伸べ、
『同室だからな』
そう言葉にしたのだ。
手を貸すと伊作は嬉しそうに笑って、
「ありがとう」
と、礼を言ったのだ。
その顔を見ると留三郎は不思議と温かい気持ちになった。
嫌だとは思わなかった。
嫌な事でも伊作が笑えばそれで良かったと思えたのだ。
何故、そんな気持ちになるのかはわからないけれど、そうなのだから仕方がない。
だから、この日も『同室だから』と言う理由で手を貸した。
自主トレに行く途中できり丸としんべヱを見かけた時、ピンときたのだ。
どうせ伊作の事だから、きっと途方に暮れているのではないかと。
五年以上も共に生活をしていればわかるし、この日は乱太郎と一緒なら尚更だ。
駆けつけてみれば案の定、二人は薬草の刈り取られた草むらで途方に暮れていて、留三郎はいつも通りに『同室だから』という理由で手を貸した。
伊作の不運は年々酷くなり、最近では留三郎にも不運が及ぶ事がある。
伊作の笑っている顔を見ると安心する。だから、笑っていて欲しい。
そんな事を思っているけれど、留三郎自身も伊作の不運に巻き込まれて酷い目にあうから、手を貸してどうにか回避したいというのも理由の一つだった。
けれど、この日も手を貸したのに、せっかく摘んだ薬草は川に落ちた時に全て流れ、落ちた三人は全員風邪をひいた。
勿論、留三郎は巻き込まれた形になった。
『巻き込まれ型不運』
よく仙蔵にそう言われ、笑われる。
文次郎には構い過ぎだと言われた。
言われた時は文次郎に言われたという事もあって、『うるせぇ』と言ってはみたものの、最上級生になったのだから、ここまでしてやる事もない。
皆、自分の事は自分でしているのだから。
小平太にさえ、『気にするなー』と言われる始末。
長次も『伊作の為にならない』と言ってきた。
確かに皆の言う事は確かで、留三郎自身もそう思っている。
今はまだ学園の中で管理されているからいいが、卒業してしまえば不運だろうが何だろうが自分でどうにかしなければならないのだ。
それはわかっているのに、留三郎は何故それが出来ないのかが未だにわからないでいる。
だからとりあえず、『同室だから』という理由なのだと結論付けた。
同室でなければ気になる事もないし、被害も受けないのだから。
仕方がないのだ。
そう思うしかなかった。
皆は伊作と同室ではないから、簡単にそんな事が言えるのだと、思い続けて五年以上が経っていた。
そして、留三郎は伊作の不運に巻き込まれるたびに考える事がある。
この日も伊作の不運に巻き込まれ、川に落ち見事に風邪を引いた留三郎は止め処なく流れる鼻水を啜りながら布団の中にいた。夜になると熱もかなり上がり、ぼーっとする頭で留三郎はまた考える。
伊作に関わらなければこんな事に巻き込まれなかった筈だった、と。
文次郎の言う通り構わなければ良かったのだ。薬草を籠いっぱいにした二人を見つけても声をかけず、自主トレに向かえばよかった。
それに、この日は伊作同様に不運の乱太郎がいた事で、いつもより酷い目に遭った気がした。
その乱太郎は同室のきり丸としんべヱに不運と風邪をうつさない為にと、今は六年長屋の留三郎と伊作の部屋で寝ている。
けれど、薬草が全て流されてしまったから、伊作は風邪をひきながらも木像掘りのアルバイトを始めていた。
そして、その削りカスは部屋で寝ている乱太郎と留三郎に積もっている。
やはり不運だからなのか、削りカスは留三郎よりも乱太郎の方に多く積もっていた。
「伊作、やるならもっとこっち来い」
「え?」
「乱太郎に削りカス積もってるんだよ」
留三郎は自分に降りかかるカスを払いながら伝えると、伊作は一度手を止めて、乱太郎に積もっているカスを払い移動する。
カンカンという木像を掘る音が頭に響くが、どうせ言っても伊作は止めないだろうし、更に削りカスが積もっては寝ている乱太郎が可哀想に思えて、仕方なく自分が我慢する事にしたのだ。
「どうせまだやるんだろ?」
「うん。だって薬草も全部流されてちゃったし…」
「仕方ねぇから俺も手伝ってやるよ」
留三郎は怠い身体を起こして、いつものように木像を支えた。
「ありがと~」
伊作は垂れる鼻水を啜り、真っ赤な顔で笑顔を作る。
彼もまた酷い風邪をひいた。
けれど、留三郎自身の調子もかなり悪く、本当はこんな事はやりたくなかったのだが、気づけば伊作に手を貸していた。
「同室だからな」
それはいつもの台詞。
留三郎の口から自然と出る台詞。
五年以上言い続けた台詞だった。
(また『同室だから』か…)
カンカンカン…
部屋には伊作が木像を削る音だけが響く。
けれど、あんなに煩く感じていたその音は次第に遠くなり、最後には聞こえなくなった。
次に目が覚めた時、留三郎は酷い頭痛に襲われた。
「っ…」
留三郎は頭を押さえ目を開けると、支えていた筈の木像は手から消え、隣に温もりを感じた。
「伊作…」
一枚の掛け布団を二人で使い、ぴったりと身体を寄せ合って寝ていたのだ。
周りには木像の削りカスが散らばり、寝間着にも沢山付いていてチクチクする。
問題の木像は伊作の横に転がっていた。
途中で眠くなってやめたのかもしれない。
乱太郎もまだ眠っているようで、少し離れた所から寝息が聞こえてきた。
まだ、起きるには早く、外はようやく空が白んできた頃で、留三郎はもう一眠りしようと一度寝返りをうち目を閉じたのだが…。
(眠れねぇっ!)
寝返りをうった事で留三郎と伊作の顔の位置が近づいたのだ。
伊作の寝息を感じる程に近い。
バクバクと心臓が激しく脈打ち、顔が熱くなった。
(何だこれ…?)
こんな事は初めてだった。
まだ下級生の頃、一緒の布団で寝た事もあるがこんな事にはならなかった。
風呂にも時間が合えば共に入る事だってあるのに、こんな風に心臓が脈打つ事はない。
(……きっと熱のせいだ)
留三郎は心臓の辺りをぎゅっとして、熱が下がればきっと治まるのだからと自分に言い聞かせ、固く目を閉じた。
留三郎が次に目を開けた時、伊作は既に隣にはいなかった。
部屋で寝ていた筈の乱太郎の姿もなく、布団は乱れたままそこにある。
あの状態で二人は何処へ行ったのか。
まだ熱っぽくてぼーっとする頭で考えていると、部屋の戸が開いた。
「あぁ、起きたのか」
そう言って寝間着姿の伊作は部屋に入ってきて、留三郎の額に手を当てた。
「うーん。まだ少し熱があるね」
「この程度なら俺は薬飲まなくても大丈夫だぞ」
「知ってるよ。最初からあげるつもりないし。それに薬はさっき乱太郎に飲ませたので終わりなんだ」
そう言って伊作は笑い、布団に座ってまた木像彫りを始めた。
けれどよく見ると伊作は目の下にクマを作っていて、昨夜あまり寝てない事がわかる。
「寝てないのか?」
一度、留三郎が目を覚ました時、隣で寝ていたから伊作も寝ていたものだと思っていたのだ。
「少しは寝たよ。でも途中で乱太郎の熱が上がっちゃってね。だから今は医務室で新野先生に診て頂いてるんだ」
「そっか。でも、お前だって…」
「僕は大丈夫」
「大丈夫じゃねぇだろ。今だってフラフラしてんじゃねぇか」
「心配し過ぎだよ」
すると、伊作は留三郎の額と自分の額をくっつけた。
「ほら、熱だって同じくらいだ」
「そ、そんな事ねぇっ!」
伊作の顔が急に寄り、留三郎の心臓がまた激しく脈打った。
「そんな事なくないだろ?顔だってまだ熱いし真っ赤じゃないか」
「それはお前の顔が近いからだっ!」
自分が動揺しているのがよくわかる。
言葉が思い浮かばず、顔を更に赤くするだけだった。
(また…)
明け方に一度目を覚ました時と全く同じだった。
「何で僕の顔が近づくと赤くなるんだよ?今までだってずっと一緒にいただろ?」
「そんなの俺にもわかんねぇよっ!」
留三郎はそれしか言えなかった。
それがわかればこんなモヤモヤした気持ちにはなってはいないだろう。
すると、伊作は顔を離して留三郎の手を強く握った。
視線はまっすぐ留三郎に向けられている。
とても真剣で強い目だ。
「……じゃあ嫌な感じはした?」
「それはないけど、……何か苦しい…」
すると伊作はふにゃんと笑って、
「良かったぁ…」
と、身体の力を抜いた。
「こんなに苦しいのに良かったって何だよ?」
「別に病気じゃないし、留三郎は留三郎のペースで知ればいいんだよ」
「そんなの余計に気になるじゃねぇか。同室なんだし、教えろよ」
留三郎は伊作に詰め寄ってきた。
それも『同室だから』といつもの台詞でだ。
やはり相当気になっているようなのだが、確かに留三郎の性格では気になって仕方がないだろう。
それも、身近にそれを知る人物がいるのだ。
「君はそれを僕に言わせるのか?」
恐らく伊作の予想は当たっているだろう。
けれど、伊作はこれだけは留三郎に自分で気づいて欲しいのだ。
伊作はずっと留三郎の事が好きで、いつも彼が手を差し伸べてくれる事が嬉しかった。
だが、伊作はもともと面倒見のいい彼だから、ただ『不運だから』『同室だから』という理由だけで手を差し伸べてくれているだけだと思う事にしていた。
期待してはいけない事なのだ。
だから、もしかしたら留三郎も自分の事を好いてくれているのではないかと、伊作はそんな淡い期待を持ちつつも考えないようにしていた。
それでも、こんな態度を取られたらどうしても期待をしてしまう。
それなのに留三郎は何故こんな気持ちになるのか、全く気づいていなかった。
「じゃあ、ちょっとだけ。な?」
何が『な?』だと伊作は思う。
(人の気も知らないで…)
「そこまで言うなら少しだけ…」
伊作は留三郎に顔を寄せ、チュッと唇を軽く触れ合わせた。
「い…さく?」
「これがヒントだよ」
伊作は赤い顔を更に赤くして、そのまま衝立の向こうに消えた。
「さっきの…」
「自分で考えて。これ以上は聞かないでくれ」
留三郎は人の事にはよく気がつくが、自分の事には疎いから気づかないかもしれない。
ここまでしたのだ。
好きでも嫌いでも答えだけは出してもらいたい。
でも―――――――
答えを知る事が怖くて…。
「………嫌だったらごめん…やっぱり今の忘れてくれ」
か細く震えた伊作の声が衝立の向こうから聞こえてきた。
「…何で?これがヒントなんだろ?」
「うん」
「なら忘れる必要なんかねぇよ」
「……うん」
伊作はそう答えながら衝立の向こうで膝を抱え、顔を伏せていた。
本当は無かった事にしたかったのだ。
これで留三郎に拒絶されたらと思うと、伊作は怖くてたまらなかった。
でも、留三郎は忘れる必要はないと言う。
「答えが出たら一番に伊作に言うから。だから忘れずに待ってろよ」
そんな優しい声で言うから…。
「うん、待ってる…」
そう言った伊作の大きな瞳からは涙が流れ、暫く止まる事はなかった。
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