蜜柑
杉の運営する小説ブログサイトです。食伊とシンジャを愛する杉の妄想吐き出しの場。
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現パロ5(大人)
六忍で途中まで配ってた無配ですが、もう配る予定がないのでアップする事にしました。
長次、こへ、もんじの三人がメインです
あ、あとちょこっとだけ滝が出てきます。
お話はこちらから↓↓
カタカタと静かな空間に電卓のキーを叩く音だけが響く。
そして、その音が止むと大きな溜め息が漏れた。
「何で合わねぇんだ…?」
黒いアームカバーを腕にはめ、文次郎は頭を抱えた。
何度やっても計算が会わないのだ。
彼は昼休みにも関わらず、未だに電卓を叩き続けていた。
「潮江先輩、もう休みましょうよ…」
そう切り出したのは文次郎の部下、田村三木衛門だった。
このままだと昼食も食べずに、定時を過ぎても計算が合うまで仕事を続けそうな勢いだったのだ。
きっと、今この人は腹が減っている事すら忘れているのだろう。
「計算が合わんっ!」
「計算が合わないのはわかってますが、お腹空きませんか…?」
三木衛門がそう言うと、文次郎は少しの沈黙の後、
「そうだな」
と、思い出したかのような一言を返した。
「じゃあ、これから一緒にどうですか?この前、美味しいパスタの店を見つけたので」
「いや、俺はいい」
文次郎はアームカバーを外し、引き出しから黒い長財布と携帯を出した。
携帯はワイシャツの胸ポケット、携帯をズボンの後ろポケットに差し込み、出かける準備をする。
「また、いつもの店ですか?」
「あそこは時間がかからないからな。田村、お前も行くか?」
「いえ、私は遠慮します」
「そうか」
文次郎はあっさり部屋から出て行った。
とにかく文次郎には時間が惜しかったのだ。
さっさと昼食を済ませて仕事の続きをしなければならなかった。
三木衛門の言う美味しいパスタの店も気にならない訳ではなかったが、今はそれどころではない。
昼食をさっさと済ます事が出来、尚且つ腹いっぱいになれる所といえば、この辺りでは一軒しかない。
店の名は、
『ラーメン中在家』。
文次郎が幼い頃から通う、馴染み深い店だ。
文次郎が店ののれんを潜ると、店主が視線を向けてもごもごと口元を動かした。
恐らく、『いらっしゃい!』と言っているのだろうが、カウンター前の厨房から出入り口までの距離でさえ、その声は届かない。
「よぉ、長次」
文次郎がカウンターに座ると、長次は黙って水を出してくる。
「とりあえず、いつもの幼なじみサービス」
「……わかった」
長次は文次郎の言う、いつものを作る。
そして、それを作っている最中に、
「いけいけどんどーん!」
という声と共に小平太が店に入ってきた。
その声に反応した長次は小平太に向かって、『いらっしゃい!』と言っているが、小平太には聞こえていないだろう。
恐らく、長次がそんな事を言っている事にすら気づいていない様子だった。
「なんだ、文次郎も来てたのか」
「まぁな。そういうお前は仕事中じゃないのか?」
「仕事中だが腹が減っては営業は出来ないからなっ!長次、私はいつもの幼なじみサービス!」
長次は小平太に水を出して頷いた。
そして、少しすると文次郎の頼んだ、『いつもの幼なじみサービス』が出てきた。
文次郎の言うそれは、文次郎専用メニューである。
メニュー内容は、味噌ラーメン(コーン多め+麺は固め+麺は半玉分増量)、餃子一皿(二個サービス)である。
幼なじみサービスというのは、長次の幼なじみの、文次郎、小平太、仙蔵、留三郎、伊作の五人だけが使えるサービスである。
特に量が増えたり、嫌いな物が抜いてあったり、個人専用メニューだった。
そして、文次郎の注文に遅れて小平太の『いつもの幼なじみサービス』が出来上がる。
内容は、豚骨ラーメン(チャーシュー三枚追加+味濃いめ+麺は一玉分増量)、チャーハン(大盛)、餃子一皿(二つサービス)である。
営業で走り回っているから腹が減ると、小平太のメニューはかなりのボリュームになっていた。
席に並んだ二人は特に話もせずに目の前にある食事にがっついているのは、二人に時間があまりないからだ。
文次郎はこれからまたいくらやっても合わない計算の続きをやり、小平太はまた営業に走る。
小平太は飲み込んでいるんじゃないかという勢いで食べ、
「ごちそうさまっ!」
と手を合わせて、文次郎より先に店を出て行った。
「あいつ、相変わらずだな」
揺れるのれんに視線を向けて文次郎がそう言うと、食器を片付けながら、
「……そうだな」
と長次は呟くように言った。
「金も払ってねぇし」
「……いつもの事だ」
「じゃあ、俺もそろそろ仕事に戻らんとな。ごちそうさん」
文次郎はカウンターにお金を置き、店を出て行った。
長次はカウンターに置かれた代金を見て、それが二人分だという事に気づく。
「お前も相変わらずだな、文次郎…」
そう小さく呟いて、長次は口元に微かな笑みを浮かべた。
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