蜜柑 六年生1 忍者ブログ

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六年生1


六年生全員が出てくる話が書きたくて書いたもの。
私はどうやら仙蔵と伊作が仲良しなのが好きらしい。
仙蔵ならきっと甘やかしたりしないと思うので、伊作はきっと一緒にいて楽なのかな~とか。
留さんはすぐ世話を焼きたがる感じがする、うん、絶対焼くよ。
仙蔵は優しいけど厳しいというそんな感じ。
といっても、この話ではそんなシリアスはないんですが、そういうのもあって何かあると愚痴ったりそんな相手が仙蔵の場合は伊作、伊作の場合は仙蔵のところにそれぞれ行く感じで。

自分の中では仙蔵は伊作の事を認めてるんですが、それのエピソードは私の頭の中にあるだけなのでそのうち書けたらいいなー

という訳でお話はこちらから↓



「伊作!伊作はいるかっ!?」
いつも自分の感情をあまり表に出す事のない仙蔵が、声を荒げ部屋の戸を勢いよく開けた。
文机に向かい書き物をしていた伊作は、急に声をかけられた事で驚き、筆をあらぬ方向へと走らせてしまった。
「あぁ…」
もう少しで終わる所でこうなってしまったものだから、伊作はガクリと肩を落とすが、こうなってしまったものは仕方がない。
それにこんな風に最後の最後で邪魔される事など、今に始まった事ではない。
伊作は小さく息を吐き、声のする方を向けば、怒りを現にした仙蔵が酒を持って立っていた。
「な、何かあったのか…?」
「何かあったも何も、部屋の前で文次郎と留三郎が喧嘩を始めてな。私は部屋でゆっくりと本が読みたかったのだ。それがこの有様だっ!」
仙蔵が懐から出したのはボロボロになった本だった。
表紙は破れ、中身はぐしゃぐしゃ。
「随分酷いねぇ…」
「それも図書室から借りた本だぞ」
「……長次、怒るだろうね」
「そうだ。これは文次郎と留三郎がやったにも関わらず、文句を言われるのは返却しにいく私なのだ。だからこれだっ!」
そう言って仙蔵は伊作の目の前に酒を出した。
「これは?」
「文次郎の大事にしている酒だ。飲んでやろうと思ってな」
仙蔵は口の端を吊り上げ笑う。
「…という訳だ。付き合え、伊作」
「じゃあつまみは今日買ってきた饅頭でいいかな?本当は留三郎と食べる予定だったんだけど…」
そう言って伊作が棚から出した饅頭はどう見ても二人で食べるような量ではなかった。
「この量を二人でか…?」
「そうだよー」
伊作は当然のように答えた。
どれだけ甘い物が好きなのか?
その量を見て仙蔵は顔を引き攣らせた。
だが、仙蔵には伊作の『留三郎と食べる予定』という言葉がずっと引っ掛かっていた。
自分が部屋に居られなくなり、本をぐしゃぐしゃにされてしまったのは文次郎と留三郎のせいなのだ。
自分がこうなってしまった理由の一つに、『留三郎』もあるのだから。
仙蔵は饅頭を暫くじっと見る。
二人で分ければ途中で胸やけを起こすだろう。
 
だが、留三郎に食わせるくらいなら
―――――――
 
「留三郎の分は私が全て食べるっ!」
仙蔵はそう気合いを入れた。
相当腹が立っているのだろう。
伊作はそれを見ながら苦笑し、饅頭を一口。仙蔵も座り、酒をゴクゴクと喉を鳴らしながら一気に飲んだ。手の甲で口を拭い、その酒をそのまま伊作に渡した。
猪口などはないからそのまま飲めという事だ。
伊作は酒を受け取り勢いよく飲む。
「あ、美味い」
「そうだろう?文次郎がそれはそれは大事にしていた物だからな」
仙蔵は意地悪く笑い、饅頭をかじる。
「伊作、この饅頭美味いな。何処のだ?」
「あぁ、これは
――――――
そう伊作が言いかけた所で、部屋の戸が勢いよく開いた。
見るとそこには笑顔の長次が立っていた。
その笑顔から、長次がかなり怒っている事がわかる。
「どうしたんだ、長次…?」
伊作がそう聞く横で仙蔵はぐしゃぐしゃになってしまった本を隠した。
長次は二人の間に座ると、もそもそと口を動かす。
耳を寄せて聞くと、
「……小平太が…私の饅頭を食べた…」
そう言った後に長次の視線は饅頭へと落とされた。
「それならこれを食べるといいよ。長次に教えてもらった店で買った饅頭だから」
「酒もあるぞ」
すると、長次は饅頭を左手に、仙蔵から酒を受け取り、一気に身体に流し込んだ。
「おぉっ!良い飲みっぷりだな、長次!私も負けてられんっ!」
今度は仙蔵が長次から酒を受け取り、長次に負けじと一気に飲んだ。
そして、仙蔵の次は伊作だ。
この酒は順番に回って来るらしいが、こんなペースで飲んでいたらすぐになくなってしまう。
伊作は遠慮がちに飲んで長次に渡した。恐らく、長次が飲んだら酒は空になる。
伊作は饅頭をくわえ、もう一度棚を開けた。
長次は饅頭をもの凄い勢いで食べながら酒を飲めば、あっという間になくなってしまった。
「なくなったぞ…」
「それなら大丈夫。留三郎の酒あけちゃおうっ!」
伊作は酒をあけるとまず初めに飲んだ。
少し前から伊作はこの酒が気になっていて、『飲みたい』と言ってもあけてくれなかったものだ。
だが、もう酒は無くなってしまった。
「いいのか…?」
長次は饅頭を食べながら聞いてくる。
「まぁ、別に構わんだろう。ほれ、これを見ろ」
仙蔵は文次郎と留三郎にぐしゃぐしゃにされた本を長次の目の前に出した。
そして、何故自分がここに居るのかと言う事と、本がぐしゃぐしゃになってしまった理由を饒舌に語りだせば、饅頭を食べて落ち着いたはずの長次がまた笑い出す。
また怒りだした長次は伊作から酒を受け取り一気飲みを始めた。
仙蔵はそれを見ながら陽気に笑い、『私も飲む』、と一気飲みを始めた。
そして、最後にはまた伊作に回って来るから二人と同様に一気飲みをする。
こんな風に飲んでいるから留三郎の酒もあっという間に無くなり、最後は饅頭を食べながらとにかく大きな声で笑った。
 
 
 
まだ三人が部屋で騒いでいると、部屋の戸が勢いよく開いた。
「さっきからうるせぇーんだよっ!」
一番初めに乗り込んできたのは文次郎だ。
その後に、
「退け、文次郎っ!」
留三郎が文次郎を押し退けて部屋に入ろうとするが、部屋の中を見て二人の動きが止まった。
「……酒くせぇ…」
「文次郎か…」
仙蔵はニヤリと笑い、床に転がっていた文次郎の酒の入っていた容器を投げつけた。
「美味かったぞ」
「美味かったって………これ俺の酒っ!?」
空になった容器を眺め肩を落としている文次郎に、
「文次郎、その程度で落胆するとは情けない」
留三郎はそう声をかけた。
「留三郎ぉ~~」
今度は伊作が名を呼び、仙蔵と同じように留三郎に酒の容器を投げつけた。勿論、それは留三郎の酒の容器だ。
「…伊作、これまさか…?」
「留三郎の酒だよ。美味しかったよ、ご馳走さま~」
伊作と仙蔵は陽気に笑い、長次は二人を見てまた怒りが込み上げてきたのか笑い出す。
『お前らなぁーーー!!』
酒を全て飲まれてしまった文次郎と留三郎は声を揃えて怒りだした。いつも喧嘩ばかりの二人だが、この時ばかりは息ピッタリだった。
そんな時、
「さっきから騒がしいが、何をしている?」
小平太までやってきて文次郎と留三郎を押し退けて部屋を覗いた。
「あっ!」
小平太は部屋の中である物に気づく。
それは伊作、仙蔵、長次の中心に置いてある物。
伊作が出した饅頭だ。
この饅頭は長次が隠し持っていた物と同じ。
つまり、この饅頭を小平太が全て食べてしまった事で長次を怒らせたのだ。
だが、この饅頭は美味い。
小平太はもう既に食べたにも関わらず、饅頭を見た途端に目が輝きだした。
恐らく、この饅頭を狙っているが、そんな事は見ればすぐにわかる。
残りの饅頭は三つ。
小平太はそれを食べようとしていた。
「伊作、仙蔵…」
長次が二人の名を呼び目を合わせると、二人は黙って頷いた。
そして、伊作、仙蔵、長次は素早く饅頭を口の中に放り込む。
「あーーーー!!」
目の前にあった饅頭が全て食べられたのを見た小平太から、悲痛な叫び声があがった。
それを見た三人は声を揃え、
『ご馳走さま』
そう言って笑い、そのまま酔い潰れてしまったが、それでも三人はとても満足そうな表情をしていた。

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