蜜柑 けまい25 忍者ブログ

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けまい25

ちょっとシリアスな話です。
なんというか・・・どうしてもシリアスになってしまうな~。


どうもいちゃいちゃしている二人よりシリアスだったり悩んでたりしてる二人を書きたいらしい。


で、今、銀魂の紅桜・・・って新訳の方見てます。
相変わらず銀さんがカッコイイです。
づらも好きなんだけど、やっぱり一番は銀さんであります。


ではお話はこちらから↓↓



「留三郎、僕を置いて行かないでくれ」
 
 
伊作は自分の腕の中で動かない留三郎に向かい、やっと声を絞りだしそう言葉にした。
留三郎はその言葉にゆっくりと目を開けるのだが、短く浅い呼吸で返事をする事は叶わず、伊作に視線を送るだけだった。
留三郎は左肩から腹にかけて、深い刀傷を負っていた。
伊作はすぐに手当をしたのだが、合戦場にいてはろくな手当をする事など出来る筈もなかった。
折れた旗を破いて止血の為に何重に巻いても、その血は止まる事はない。
「留三郎、帰ったらちゃんとした手当をするからもう少し頑張ってくれ」
そう言って伊作は留三郎を背負う。
すると、伊作の胸元を留三郎が強く掴んだ。
「…………伊作」
留三郎の掠れた声が伊作の耳元で囁く。
いつものような力強い声ではなく、今にも消えてしまいそうな小さな声で伊作の名を呼んだ。
「喋ると傷に障る。話なら後で聞くから、今は休んでてくれ」
でも、それでも留三郎は伊作の胸元を強く掴んだままだ。
話したい事があるのだろう。
それでも伊作は留三郎に負担をかけさせたくなかった。
「留三郎、少し……」
「ごめん…」
伊作の言葉を留三郎が遮った。
「……これ…からも、ずっと一緒にいるって……約束したのに…。俺……、約束守れそうにない…」
その後、また小さく『ごめんな』と呟いた。
「謝らなくていいっ!謝らなくていいから、そんな事言わないでよ…」
留三郎はもう自分がそう長くないとわかっているのだ。
そして、手当した伊作がそれをわからない訳がない。
それでも伊作は助かると信じていたかった。
留三郎からそんな言葉を聞きたくなかった。
今も留三郎は誤り続けている。
それを聞いているのが辛くて、伊作は涙を流しながら合戦場から離れようとしていた。
だが、次第に声がしなくなり、背中に感じる鼓動が弱まっていくのを感じる。
さっきまで力を込めていた手にも、もう力が入らなくなっていた。
「あぁ、留三郎。もう少しで城に着くよ」
ようやく伊作の目に自分達の勤める城が見えた。
合戦場は城からさほど離れている場所ではない。
それでも人を背負い、尚且つ時間のない時はその距離でさえ随分遠くに感じてしまう。
『もう少しだから』と何度も言い聞かせながら歩を進めると、留三郎は小さな声で伊作の耳元で、『下ろしてくれ』と囁いたのだ。
伊作は黙って足を止め、留三郎ゆっくりと下ろし、近くにあった木に寄り掛からせた。
すると、留三郎はじっと伊作を見つめて手を伸ばす。
「やっと…伊作の顔が見れた…」
「そんな事より早く帰ろう…」
力無く頬を撫でてくる手を取り、伊作は泣くのを必死に我慢していた。
留三郎の表情を見たら泣けなかったのだ。
 
 
(何で笑ってるんだよ…)
 
 
もうすぐ留三郎は死ぬ。
それがわかっていない筈はないのに、留三郎は穏やかな表情で笑っていた。
そして、伊作を引き寄せる。
「……もっと強く抱き…しめたかったのに、力…入んねぇ…」
「大丈夫だよ。力が入らなくても僕はちゃんと留三郎を感じられるから」
伊作も留三郎の背に腕を回して、静かに彼を感じる事にした。
次第に鼓動はゆっくりになり、回していた腕から力が抜け、かろうじて動いていた鼓動も止まった。
「留三郎…」
伊作はまだ温もりの残る留三郎を強く抱きしめると、
 
 
『伊作っ!』
 
 
と、名を呼ばれた気がした。
それはとても力強い声で呼ぶのだ。
「……留三郎」
伊作は自分の名を呼ぶ人物の名を小さく呟き、ゆっくりと目を開けると、目の前に留三郎の姿があった。
暫く今の状況が理解出来ずにいた伊作だが、周囲を見てすぐに今までの事が夢だとわかる。
ここは忍術学園の六年長屋。
二人の部屋だ。
「どうした、うなされてたぞ?」
留三郎は衝立を越えて、伊作のすぐ横に座っていた。
「起こしちゃったかい?」
「いや、そんな事ねぇよ」
そんな事を言っているけれど、留三郎は伊作が寝るよりも先に爆睡していたのを知っている。
遠出の野外演習で彼が疲れていたのを伊作は知っているのだ。
それなのに留三郎は伊作の頭や頬を優しく撫でてくれていた。
「……留三郎、留三郎っ!」
伊作は留三郎の名を呼び、彼に腕を回して引き寄せた。
留三郎はそのまま伊作の上に倒れ込み、二人の身体がくっついた。
そして、伊作は力強く脈打つ彼の鼓動と、暖かく心地好い体温を感じる。
留三郎はただ黙って伊作のしたいようにさせていた。
きっと何を聞いても伊作は何も言わない。
自分の中の不安や悲しみを留三郎に打ち明ける事はしないのだ。
でも、隠していても何となく空気で感じる事は出来るし、不意な事に伊作は対応が出来ないようで、こうやって甘えてくる。
頼ってくれるのは嬉しいけれど、伊作のこんな姿は見たくなかった。
だから、伊作が少しでも早く笑えるように、留三郎は抱きしめる腕に力を込めた。
「ねぇ、留三郎……」
「何だよ?」
「もう僕を置いて行かないで…」
 
 
(……もう?)
 
 
留三郎には伊作の言う言葉の意味がわからなかった。
いつも一緒にいるのに、何故伊作はこんな事を言うのだろう?
 
 
それでも、今の留三郎に言える事は一つ――――――。
 
 
こんな言葉は無意味だとしても。
 
 
「あぁ、置いてかねぇよ。ずっと一緒だ」
その場凌ぎの気休めだ。
すると伊作はその言葉を聞いて、口元に笑みを浮かべる。
「優しいね、留三郎は」
そう呟き、伊作は留三郎を引き寄せる腕にまた力を込めて、静かに涙を流した。
 
 
 
君のその優しさが時々、酷く残酷に思えるんだ―――――――

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