蜜柑 けまい13 忍者ブログ

蜜柑

杉の運営する小説ブログサイトです。食伊とシンジャを愛する杉の妄想吐き出しの場。

   

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けまい13

留と伊作がまだ1年生の時の話を書いてみました。
うぅ・・・
やっと書けた~~。
今までサイト用は短い話しか書いてなかったから、やっとちゃんとしたのサイトで書けたよ。
でも書くのが遅いから時間がかかる・・・(涙)


1年生の時から同じ部屋で席が隣だったらいいなーとかそんなんで、そうしちゃったよ、もう。
あと、先生が出てきますが、この頃の1年生の担任って誰なんだろう?
1年は組の担任はずっと土井先生と山田先生なんだろうか?
よくわからないので、『担任』という表記にしてます。
ま、メインは留と伊作だもん。

というか、留と伊作はいつも手とか繋いでるといいよ。
それが6年になっても何かあると繋ぐといい。
自分の書く二人は何かあると手繋いだりする設定になってますが、一応二人がそうする理由なんてのをずっと考えていて、今回書いてみた。
それなりに考えていた話なので、やはりいつもアップさせる話よりもずっと長く書けるなぁ~。


そんな訳でお話はこちらから↓↓



『こうすると怖くなくなるんだ』


そう言って、留三郎は強く手を握ってくれた。



「じゃあこれからここで授業を始めるぞー」
実技の担任は、皆に授業開始を告げた。
この日の授業内容は教科書に載っている薬草数種類の植物を写生する事だった。
まだ、忍たま一年生の野外演習などこんなもので、遠足気分で教科書、植物を書き写す紙と筆を持ち、実技、教科担任二人が同行し、裏山へ出かけた。
だが、これは一年生にとっては初めての野外演習だ。
遠足気分ではしゃいでる者もいれば、不安がっている者もいた。

「留三郎、一緒に回ろう」
伊作はニコニコ笑いながら、一人で辺りをうろついていた留三郎に声をかける。留三郎は伊作の声に振り向き、
「いいよ」
と答えた。
伊作が留三郎に声をかけたのは、二人が同室同士で座る席も隣同士だからだ。
この忍術学園に入学して一番身近に居る存在だった。
良く晴れた日に外に出られて伊作の気分はかなり高いが、初めての野外演習という事もあって一人で居るのは少し不安だったのだ。
でも、そんな伊作とは違い留三郎は落ち着いている。
少し喧嘩っ早い所があって、時々ハラハラする事はあるけれど、こうやって落ち着いている姿を見てると伊作は安心出来た。
「ねぇ、僕達は何処を探す?」
「そうだなー……、ここら辺は皆が探してるからあっちは?」
「じゃあ、あっち行こう」
伊作は留三郎の後ろに着いていくのだが、少し歩くと急に足が止まった。
急に前で止まるから、伊作は留三郎の頭に勢いよく鼻をぶつけ、打った鼻を押さえ涙目になっている。
「どうしたんだ、留三郎」
足を止めた留三郎は拳を強く握り、身体を小刻みに震わせていた。
「どうしたの?具合でも悪い?」
「…………だ…」
「何?」
「お前に見下ろされるのが嫌なんだっ!」
留三郎は、は組の中で一番身長が低い。
伊作は一番ではないが大きい方で、留三郎との身長差は大人の拳一つ分位あった。
誰もそんな事は気にしていないのだが、本人だけがそれを気にしているのだ。
「じゃあ、僕が前を歩こうか?」
「お前を見上げてんのも嫌だ」
いつもは伊作に対してこんな風に当たる事はないのに、この日はやけに絡んできた。
だけど、伊作はその原因を知っている。
入学当初から会う度に喧嘩ばかりしている、い組の潮江文次郎と争ったばかりなのだ。
それに文次郎は今年入学した一年生の中でも身長は大きかった。
そして、言い争う度に留三郎は文次郎に見下ろさている。
取っ組み合いの喧嘩になっても体格差で負けてしまうのだ。
きっと、それが悔しいのだろう。
今日も留三郎の顔や腕には傷がある。
「……今日は別々に行こうぜ…」
いつも真っすぐ目を見て話をする留三郎が伊作と目を合わせようとせず、顔を横に逸らしていた。

(目を…合わせるの嫌なんだ……)

伊作と目を合わせれば、身長差がどうしてもわかってしまうから。
そして、とうとう伊作から完全に背を向けた。
一人で行こうとする留三郎の背中を伊作はじっと眺めていたのだが、
「待ってっ!それじゃ、並んで歩こう。並んで前向いてれば大丈夫だかっ……………らぁぁぁぁーーーーー!」
伊作は一人で行こうとする留三郎の手を握り、引き止めようとした所で足を滑らせた。
「伊作っ!」
足を滑らせ崖下に落ちようとしている伊作の手を引くのだが、結局支え切れずに留三郎も一緒に崖下へと勢いよく落ちて行った。
崖はそんなに高くはないけれど、例え怪我をしていなくても斜面が急で登れそうもない。
「いったぁ~。留三郎、怪我はない?」
伊作は斜面を見上げながら留三郎に聞いた。
「それは俺の台詞だっ!動けるか?」
崖から落ちた時、伊作は留三郎を咄嗟に庇っていたのだ。共に落ちた留三郎の身体を抱きしめたまま、伊作は背中で斜面を滑った。
だから、留三郎には殆ど怪我はなく膝をすった程度だが、背中で斜面を滑り落ちた伊作は傷だらけだった。
伊作は笑っているが、その笑顔は引き攣っていて、留三郎はすぐに上から下りて顔を覗く。
「伊作…」
「大丈夫。でもちょっと動けないかも…」
「どっか怪我したのか?」
留三郎が右肩にほんの少し触れると、伊作は身体を震わせ小さく声を上げた。
「俺を庇ったから…。ごめんっ!」
「……大丈夫…っ…」
そう言う伊作の目には今にも零れそうな位、涙が溜まっている。
痛みを必死に堪え、零れそうになる涙を堪えていたけれど、伊作の我慢も虚しく、一度零れてしまった涙はぽろぽろとこぼれ落ちた。

(俺のせいだ…)

留三郎は崖から落ちる伊作を支える事が出来なかった。
そして、伊作は留三郎を抱き抱えるようにして落ちたのだ。
自分の身体がもっと大きかったら、伊作を支えられたかもしれない。
そして、こんな風に身体が小さい事を気にして我が儘を言わなければ、伊作は怪我をしなかったかもしれない。
考え出したらキリがなかった。
「伊作、ごめん…」
今は謝る事しか出来なくて、それがまた情けなくて、留三郎も涙を零しながら謝った。
「留三郎のせいじゃないよ。僕が落ちたのがいけないんだから」
そう言って涙を零しながら伊作は笑う。
伊作はこうなったのが留三郎のせいだと思ってはいないのだ。
ただ、留三郎だけが気にしている。
「僕は大丈夫だよ。それに慣れてるから」
少しでも留三郎が気にしなければいいと思った。
だから、身体は痛いけれど伊作は笑って見せるのだ。
「慣れてるってお前なぁ~」
留三郎は袖で涙を拭いながら笑う。
本当は笑う気になどならなかったが、伊作が笑うのだから仕方がない。
それに、泣いていても伊作の怪我は治らないし、何も解決しない事は留三郎にもわかっているのだ。
伊作の怪我の手当ての仕方もわからないのだから。
「伊作。俺、先生を呼んでくるよ」
帰り道などわからなかったが、いつまでも伊作をこのままにしておく訳にはいかなかった。
崖を登れれば、皆のいる所まではすぐだから、留三郎はその壁をじっと見上げるのだが、斜面が急で登る事が難しい。
留三郎は崖を登る事は諦め、皆と合流する別の道を探そうと立ち上がった。
「待ってっ!」
伊作は身体を起こして留三郎の足を掴む。
でも、全身に走った痛みで、その手はすぐに離れてしまったが、留三郎の足を止めるには十分だった。
足を捕まれた留三郎はそのまま勢いよく転んで顔を打つ。
「――――っ!…何だよっ!?」
「留三郎が行くなら僕も行く」
「動けもしないのに無理言うな!すぐ戻って来るからここで待ってろよ」
「やだっ!」
伊作は留三郎の足をまた掴んで離さなかった。
でも、強く振りほどいてしまえば今の伊作ならば簡単に振り切れるのに、留三郎はどうしてもそれが出来なかった。
伊作の手が小さく震えていたのだ。

(震えてる…)

さっきから笑ったりしているけれど、きっと伊作は怖かったのだと思う。
崖から落ちて、そして怪我をした。
大丈夫だと言っているけれど、一人にされたら心細いのだ。
「じゃあここにいるよ。それと伊作、こっちの手は痛くないか?」
留三郎は伊作の方に向き直り、伊作の左手を軽く握る。
「大丈夫だよ」
「そっか。じゃあ……」
よしっ、と頷いた留三郎は伊作の左手をぎゅうっと強く握った。
「え、何?」
「こうすると怖くなくなるんだ。きっと震えも止まるから」
「うんっ!」
今度は伊作も留三郎の手を今出せる精一杯の力で握り返した。
でも、ずっとここにいてもこの状況は変わらない。
どうにかして誰かに見つけてもらわなくてはならなかったが、留三郎はここから動く事は出来なかった。ずっと伊作が強く手を握っているからだ。
「伊作、これからどうする?」
「うん、先生を呼ぼう」
「いや、だから…」
留三郎がそう言いかけると、

「先生ぇーーーー!!」

伊作が今まで出した事がない位大きな声で叫んだ。
「ほら、留三郎も呼んで」
「お、おう」
「せーのっ!」


『先生ぇ~~~~!!!』


伊作の『せーのっ!』で二人は声を合わせて叫んだ。


そして、もう一回。


『先生ぇぇぇ~~~!!!』


二人が叫んだ二回目の先生。
その後に、
「さっきから何だっ!?」
二人の呼び声に担任が崖の上から下を覗く。
「先生、伊作が怪我してます」
「なにっ!?」
すぐに崖下に下りてきた担任は伊作の怪我を見て、懐から出したサラシと落ちていた太めの木を拾って、動かない右腕にサラシで固定した。
「留三郎、お前の方は大丈夫なのか?」
「私はちょっと膝を擦っただけで…」
留三郎は膝に触れられると、小さく声を上げて、じわじわと目に涙が滲んできた。
「この怪我じゃ授業は無理だな。学園に戻るぞー」
担任は動けない伊作を背負い、留三郎を脇に抱えると、崖ではなく山道を下る。
そして、学園に戻るまでの道のりは、ずっと説教をされ続けていた。



授業の途中で二人は学園に戻り、医務室へと運ばれた。
担任は二人を医務室に送り届けると、また授業に戻る為、裏山へと向かう。
医務室で二人は手当てを受けると並んで寝かされた。
伊作は真っすぐ天井を見る留三郎に視線を向ける。
「足、大丈夫?」
「たいしたことねぇ」
「………本当にごめんね」
「何で謝るんだよ?」
「だって…」
伊作は留三郎が怪我をしている事に全く気づかなかった。
きっとよく見れば留三郎の動きに違和感があったのかもしれないが、伊作は自分の事だけで精一杯で何も出来なかった。
それに、留三郎に怪我を負わせてしまったのは自分のせいだと伊作は思うから―――――
「あー!だから泣くなっ!お前は悪くねぇよ。ちょっと運はないかもしれないけどな…」
伊作は何かあるとすぐに泣く。
感情を隠さず、泣いたり笑ったりするのだ。
でも、留三郎はそんな所が気に入っていて、伊作とはよく一緒にいるが、嬉しくて泣いているのならいいけれど、悲しくて泣いている姿を見るのは嫌で仕方がなかった。
「伊作、もう泣くなよ!ほらっ」
留三郎は伊作の方に少し寄ってから手を伸ばし、手を伸ばせと合図する。
そして、伸びてきた伊作の手を留三郎は強く握った。
「こうやって手を握ると元気出るだろ?」
「うんっ」
伊作は笑った。
留三郎に手を握られると、不思議と落ち着くのだ。
小さいけれど暖かい手に伊作はいつも励まされていた。
「元気出たよ~」
「じゃあ伊作に何かあったら俺が手握ってやる」
「僕も留三郎に何かあったら手を握るよ」
「おう」
二人はそう約束して、強く手を握りあった。

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