蜜柑 くくたけ2 忍者ブログ

蜜柑

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くくたけ2

これ本当にくくたけか?と一瞬思ったけど、そのつもりで書いてるからくくたけだと言ってみる。

久しぶりの更新がけまいじゃないとか・・・

けまいは原稿の方は原稿の方をやってるので、気分転換にくくたけ!


それでは、お話はこちら~↓



五年生だが、八左ヱ門は生物委員会の委員長代理だ。
委員長代理と言えど、やる事は委員長の六年生達と同じ。委員会のある日は他の五年生よりも忙しかった。
昨夜は刺すような寒さの中一晩中、逃げ出した虫を探し、ようやく明け方捕獲作業が終わったのだ。次の日が休みだから見つかるまで探し続け、今、仮眠から目を覚ましたところだった。
昨夜は本当に寒かったから風邪を引くかと思ったけれど、多少の眠気はあれど身体は何ともない。
強いて言えば虫を探している最中に枝に引っ掛けて作った傷位で、右手の甲がほんの少しヒリヒリした。
 

(あぁ、眠い…)
 

でも、手の甲よりも眠気が勝る。
朝に帰ってきたから今はもう昼過ぎ。
同室の雷蔵と三郎は帰ってきた時には寝ていたのに、八左ヱ門が目覚めた時には出掛けてしまっていた。
休みの日は殆どの忍たま達が帰宅、または出掛ける事が多いから、学園の中はとても静かで、寝るには最適だった。
でも、それなのに目が覚めるのは腹が減ったからだ。
昨夜、三年生の孫兵が虫を脱走させたと聞いて、八左ヱ門は夕飯を食べる事なく捜索を始め、そのまま朝食も食べずに寝てしまったのだ。
 

ぐぎゅるるるる


腹が大きな音をたてて鳴った。
雷蔵や三郎がいれば何か食べ物を持っているかもしれないのだが、こんな時に限って居ないのだ。
更に忍術学園は休み中は食堂もやっていない。
菓子でもあれば良いのだが生憎そんな都合のいい物は部屋になく、今簡単に手に入り食べられる物を思い浮かべてみると虫しかなかった。
 

(確かあそこの木の下に…)
 

腕を組み、眉間に深いシワを寄せ、食べれる虫が何処にいるかを必死に考えながら部屋を出る。
まだ日が出ているから昨夜ほど寒くはないけれど、冷たい風が布団から出たばかりで暖かかった八左ヱ門の体温を急激に奪っていった。
「うー、寒い」
身体を縮こませて廊下を歩くと、隣の部屋の戸が少しだけ開いているのに気がついた。
チラッと覗けば、少し癖のある長い黒髪が見える。


(兵助…)
 

八左ヱ門は気配を消し、静かに戸を開けた。中に勘衛門の姿はなく、兵助が一人、机に向かって本を読んでいるのだ。
八左ヱ門は静かに戸を開けて部屋に入ると、兵助のすぐ後ろに座り、そのままにっくりと黒髪に顔を埋めた。
「……何してんの、八左ヱ門」
「寒いからくっついてんの」
「でもそこ寒くないか?さっきまで戸が開いてたし」
兵助の髪は戸の隙間から入る冷たい風を受けて冷たくなっている。
「戸なら閉めた。それに兵助にくっついてるから平気」
こんな部屋にいたら寒い筈なのに、兵助は戸が開いてる事に気づきながら閉める事をしないし、部屋の中には火鉢はあるのに、肝心の火がついていなかった。
『平気』とは言ったものの、ひんやりとした空気に八左ヱ門は身を固くして兵助の身体に腕を回す。
「そんなに寒い?」
「寒いっての!あーでも俺、寒いの苦手だけど、兵助とこうしてると気持ちいいから寒くてもいいかなーって思うよ。兵助は?」
「好きだよ、こうしてんの。だって八左ヱ門だから」
兵助はそう告げると机に突っ伏したまま顔を上げなかった。
きっと恥ずかしいのだと思う。でも、今は八左ヱ門と顔を合わせていないから素直に気持ちを言っているけれど、次第に恥ずかしくなったのだろう。
「へーすけー」
「……何んだよ?」
「耳が真っ赤だぞー」
八左ヱ門は兵助の耳を冷えた手で押さえると、手に熱が伝わってきて暖かい。
「やめろよ、八左ヱ門っ!」
「やだ、止めない」
「何でだよ!?」
「好きだから。兵助は?」
八左ヱ門はそう聞いた。
聞けば兵助は答えをくれる。いつも恥ずかしいからと言って面と向かって言ってはくれないけれど、それでも答えてくれるから。
兵助は『あぁーっ』と声を上げると、耳を覆う八左ヱ門の手に触れた。
「好きだよ!めちゃくちゃ好きっ!」
「だよなぁ~」
兵助がそう答えてくれる事はわかっていても、彼の声で、言葉で聞ける事が、八左ヱ門は嬉しかった。思わず兵助の髪に更に顔を深く埋める。少し苦しくてもそんなのは気にしない。
『へーすけ好きだー』って言いながらくっついていると…。


ぐぎゅるるるる…


空腹である事を思い出したかのように、八左ヱ門の腹が大きな音を立てて鳴った。
「腹減ったー…」
八左ヱ門は平気にくっついたままズルズルと落ちていく。
「饅頭ならあるけど?」
「マジで!?兵助、大好きっ!」
八左ヱ門はゴリゴリっと額を兵助の髪もろとも背中にこすりつけじゃれる。
「痛っ!痛いって!」
「あ、ごめん」
と言いながらもう一度ぎゅうっと兵助を抱きしめた。
そして、兵助の出した冷たく少し固くなった饅頭に、八左ヱ門は頬を綻ばすのだった。

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