蜜柑 くくたけ1 忍者ブログ

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くくたけ1

いつも拍手ありがとうございますっ!


拍手も貰えてるのでがんばろーって更新したのが、くくたけ。
かなり前に書いた物なので、今以上にこの二人がつかめてません。


試しに書いた5年生だけど、難しい~~~



それではお話はこちらから↓↓




この日は闇夜。
夜を照らす月は深い闇に覆われしまっている。
忍者にとっては絶好の忍務日和ではあるが、そうでない時はあまりよい日とは言えなかった。
兵助は何となく夜風に当たりたくて、風呂上がりに闇夜の中に居た。
すると、闇に紛れて自分に近づいて来る気配を感じた。
風の音に混じって微かな足音がする。
 
(誰だ?)
 
兵助が足音のする方に視線を向けると、
「兵助」
視界の中に髪を靡かせ走ってくる八左ヱ門の姿が飛び込んできた。
そして、兵助の目の前で止まり八左ヱ門は真っすぐで力強い眼を向ける。
それはまるで獣のような眼で、兵助はそれに一瞬怯んだ。
だが、兵助は平静を装う。
「何だ?」
八左ヱ門は兵助と目が合ってから決して目を逸らず、じっと見つめて一つ大きく息を吸って吐いた。
「好きだ!」
「そ、そうか」
唐突にそんな事を言われて、兵助は目を丸くし、八左ヱ門にどう返事を返したらいいかわからず、こんな咄嗟につまらない返事を返してしまった。そう返すだけで精一杯だったのだ。普段、優秀な兵助だがこう感情的に物事を言われてしまうと、頭がそれについて行かなかった。
 
(……何なんだ、急に)
 
何故、急に八左ヱ門がこんな事を言い出したのか。
そして、この八左ヱ門の『好き』はどういう意味なのか。
兵助はきちんと順を追って考えたかった。
答えを出したいのだ。
でも、
「ちゃんと、伝えたからな」
八左ヱ門は兵助に考える余裕を与えず、そして答えを聞かずに走り去っていく。
「八左……」
だが、兵助は去っていく八左ヱ門を呼び止めようとして止めた。咄嗟に伸ばした手をゆっくりと下ろし、強く拳を握った。
呼び止めてどうするつもりなのか、と思ったのだ。
何をどうしたらいいのかわからないが兵助には、八左ヱ門をに何を聞いたらいいかわからなかった。
 
(でも、本気の目だった…)
 
八左ヱ門の怖いくらいの本気。
あんな目を向けられたのは初めてだった。
何故、急にこんな事を伝えてきたのかわからなかった兵助だが、八左ヱ門は本気の『好き』をぶつけてきた。
本気で想いをぶつけてきたのなら本気で返すまで、兵助はそう思う。
 
(しっかり考えよう…)
 
自分が八左ヱ門をどう見ているのか。
自分の中の『好き』が一体何なのかを。
八左ヱ門の事は嫌いじゃない。
寧ろ、『好き』の分類に当て嵌まる。
好きじゃなかったらそもそも一緒に居ないし、その場で即答し適当な答えを出せばいいだけだ。それが出来ないのは八左ヱ門の事を中途半端にしたくないし、好きだからである。
 
(好き、だよなぁ…俺も…)
 
八左ヱ門に触れてると温かくて安心するし、自分の鼓動が少し早くなるのには気づいていた。
ハッキリとそれを意識していた訳ではないが、こうやって改めて考えると、きっと八左ヱ門の事が好きなのだろうと思う。
他の人とは違う特別な何かを感じているのだ。
それに、逃げずに何事にも真っすぐ向かっていく所が一番好き。
虫や生き物の飼育を真面目にしているのはいいけれど、よくそれらを逃がしているのは気に入らない。虫を背中に入れられた事もある。
五年も一緒にいたら気に入らない時だってあるけれど、それ以上に好きな所が多いのだ。
兵助は自分には少し捻くれた所があると思う。
だが、八左ヱ門にはそれがないのだ。
いつも真っすぐで、兵助からすればとても羨ましいものだった。
自分にないものを持っているものには、強く惹かれてしまうのは仕方がない事なのかもしれない。
「……とりあえず返事しなきゃな」
兵助は頭をかきながらさっきの八左ヱ門の姿を思い出す。
真っすぐ兵助を捕らえて力強い口調で『好きだ』と言った。
 
そして、兵助の返事を聞く事なく―――――
 
「………聞く事なく……………逃げたっ!?」
兵助は自分の好きな八左ヱ門を考えた。
けれど、八左ヱ門は途中で逃げたのだ。
それに気づいた兵助は怒りに奮え、
「八左ヱ門っ!」
そう名を叫び、自分の前から逃げるように去った彼を追った。
八左ヱ門の逃げた方向は長屋の方ではなかったから、部屋にはまだ戻ってはいないだろう。
それに何となくだが、八左ヱ門はまだ近くにいるような気がしたのだ。
息を殺し、近くに潜んでこちらの様子を伺っているような感じがした。
「出てこい、八左ヱ門っ!近くにいるんだろっ、八っ!」
すると、兵助から一番近くの木からガサッと音がして葉がハラハラと落ちた。
「八か?」
「……うん」
下から見上げると何となく八左ヱ門の影が見えたが、はっきりとは姿が見えなかった。
兵助は動きにくい寝巻で木に登り、八左ヱ門のすぐ横に立った。
「逃げただろ?」
「………ごめん。急に好きだって伝えたくて伝えたまではよかったけど、兵助がびっくりしてるのに気づいて、ちょっと怖じけづいたんだ」
「いきなりあれじゃびっくりするだろ、普通…」
「そうか?」
「じゃあ、俺がいきなり『好きだ』って言ったらどうなる?」
そう聞くと八左ヱ門は少しだけ考えてからニヤリと笑う。
恐らくそれを想像して笑ったのだろう。
「……何笑ってんだ?」
「だって想像したら嬉しかったんだから仕方ないだろ。兵助は嬉しくなかった?」
「返事聞かずに逃げたのは誰だよ…?」
兵助からは深いため息が漏れた。
それを見ながら八左ヱ門は笑ってごまかし、頭をガリガリとかく。
こうやって自然に答えを聞く事だって出来るのに、八左ヱ門は咄嗟に逃げた。本当はちゃんと言葉で返したかったけれど、今更聞いてくる事にどうしても納得出来なくて、兵助は伝える事を止める事にした。
でも、八左ヱ門は答えが気になるらしく、じっと兵助に真っすぐな視線を向けてくる。
『好きだ』と伝えてきた時のような強く鋭い視線ではなく、少し気の抜けたような柔らかい視線を。
だが兵助はそれを手で隠した。
隠した時、パチンといい音がする。
「イッテェッ!、何す………ぅっ…」
目隠しをされたまま八左ヱ門の身体が硬直し、ドクン、ドクンと心臓が高鳴るのを感じた。
自分の口を塞ぐように重なったものが、兵助の唇だと気づいたからだ。
でも、触れ合わせた唇から兵助もまた緊張しているのが伝わって、緊張しているのが自分だけじゃないとわかると少し安心した。
そして、ゆっくりと唇が離れるが、目隠しだけは外されなかった。
「………八…………おやすみ…」
「兵助っ!」
視界が開かれた時、既に兵助の姿は目の前から消えていた。
でも、兵助は返事をくれた。
言葉ではないけれど、その行動で示してくれたのだ。
「………言葉で伝えるより恥ずかしい事すんなよー」
八左ヱ門は顔を耳まで真っ赤にしながら、嬉しそうに笑った。
 
 
 
(あーもう何をしてるんだ、俺はっ!)
 
兵助は八左ヱ門から逃げるように離れた。
姿を見られないように全速力で走る。
いくら月のない闇夜であっても、ずっとその中にいれば目が慣れてきてしまうからだ。
八左ヱ門の不意をついて口を吸った。
こんなやり方は初めてで、今になって恥ずかしくなった兵助の顔は真っ赤になっている。
そして、顔は燃えるように熱い。
 
(八の奴、今頃どんな顔してるだろう?)
 
八左ヱ門が今どんな表情でいるかが兵助は気になった。
 
 
気になって、気になって――――――
 
 
考える度に恥ずかしさが増していく。
 
 
でも………
 
 
兵助は顔を真っ赤にしながら、嬉しそうに笑っていた。

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