蜜柑
杉の運営する小説ブログサイトです。食伊とシンジャを愛する杉の妄想吐き出しの場。
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めぐり会いは再び1
宝塚が大好きなので、それのパロを書いてみました。
すごく可愛い話なので、これけまいでっ!と思って書いてるけど、一つの演目を小説にするとかなり長くなるので、今回は連載にしてみましたー!
それで、注意です。
もちろん内容は食伊。
設定にオリキャラが多数出てきます。
伊作は女の子です。
というか性別が女の子に変ってる子多数。
時代は室町じゃないです。
日本でもない。
食満さんと伊作さんは貴族設定になってます。
でも、名前を変えたりすると面倒なのでお貴族様だけどそのままです。
こんな感じなので、苦手な方は読まない事をお勧めします。
それではお話はこちらから↓↓
すごく可愛い話なので、これけまいでっ!と思って書いてるけど、一つの演目を小説にするとかなり長くなるので、今回は連載にしてみましたー!
それで、注意です。
もちろん内容は食伊。
設定にオリキャラが多数出てきます。
伊作は女の子です。
というか性別が女の子に変ってる子多数。
時代は室町じゃないです。
日本でもない。
食満さんと伊作さんは貴族設定になってます。
でも、名前を変えたりすると面倒なのでお貴族様だけどそのままです。
こんな感じなので、苦手な方は読まない事をお勧めします。
それではお話はこちらから↓↓
「ご主人様、こっちですよ。早くっ!」
そう言って主人の荷を持ち、腕を引くのは従者の作兵衛だ。
「作兵衛、そう急ぐな」
腕を引かれるのは主人の留三郎。
「でも急がないと約束の時間に間に合わないですよっ!」
と、作兵衛は留三郎の少し前を歩き焦っていた。二人は時間に少々遅れているのだ。
物事は必ずしも思い通りにいくものではない。
予定をたて、丁度いい時間に家を出たとしても、自分ではない第三者のトラブルに巻き込まれる事がある。
そう、思いも寄らないトラブルに二人は巻き込まれたのだ。
そうでなければ遅れる事はなかった。
何故なら、前日の昼間から留三郎は目的地までのルートを調べていたからだ。作兵衛にやらせてもよかったのだが、どうも自分で調べなければ気が済まなかった。
そして、何が起きても対応出来るようにといろいろなパターンを考え、今はその中の一つを使ってきているのだけど、どうやっても間に合いそうもない。
幸先の悪いスタートだ。
いつもならそれでイライラする留三郎なのだが、ここまで調べ、時間に煩い筈の彼に急ぐ様子はなかった。
「そんなもの、待たせておけばいいだろ」
と、投げやりなのだ。
(ご主人様にしては珍しいな…)
作兵衛はそんな事を声に出さずに内心呟いた。
そして、この旅路に留三郎の気分が乗っていない事もわかっている。
さっきからずっと重いため息をついていたからだ。
「まぁ、こっちは公爵、あちらは伯爵ですが…、そんな事言わないでくださいよ。ご主人様らしくないです」
「そうは言ってもな、俺はこれから品定めされるんだ。気にいらねぇ…」
「伯爵様の娘、伊作様の為に三人の花婿候補を集めて、その中から一人を選ぶんですよね?」
「そうだ。そして俺もその求婚者の一人という訳だ。バカバカしい話だろ」
腕を組み、眉間には深いシワを寄せ、留三郎はふぅとまた小さく息を吐いた。
この結婚話は留三郎の意思ではない。食満家と善法寺家は貴族だ。格式は食満家の方が上だが、長い付き合いがあり、現当主同士も仲がいい。家は離れているがわざわざ時間を作って酒を飲み交わす事もある。
そして、この話はその酒の席で、留三郎のいない所で決まってしまったのだ。
勿論、留三郎は反対したが、結局その花婿選びに参加する事になり今に至る。
だが、食満家がこうするには理由があった。
作兵衛がわかるのだ。留三郎もそれを十分わかっている。
だから、気は進まなかったが最終的に当主の命令に従った。
それに、候補は自分を含めて三人。
選ばれる可能性は三分の一の確率なのだ。
そう考えて留三郎はここにいるのだけれど、やはりこうなるに至った動機が気に入らないらしい。
「でも仕方ないですよ。善法寺家は田舎領主とはいえ豊かな土地を持つお金持ち。もし、ご主人様が無事お婿さんに選ばれたら、格式ばかり高くて顰蹙財政の我が食満家も安泰。その上、善法寺家の令嬢、伊作様はかなりの美女との噂の方。お金とお顔が一気に入るというチャンスと考えれば、急ぐが得ってもんですよ」
「……作兵衛、そういう問題じゃないんだ。それにお前は間違ってる」
留三郎のため息はますます深く重い。
「何がですか?」
「お顔もお金は儚い物だ。大切なのは本質、本当の姿だ。外見や肩書きじゃなく本当の姿を見極め、我が食満家に相応しい妻を娶る事が貴族の資性としての義務なんだ」
「はぁ、義務ですか…」
貴族としての資性は貴族ではない作兵衛にはわからない。
お金とお顔が揃っているなんて、とそんな物とは無縁な作兵衛は思う。
だが、留三郎は肩書きを気にしない男。
一般市民が貴族のような贅沢を羨むように、貴族である留三郎は一般市民の生活に憧れというのを抱いているのか。
(あーでもこの人はそんな事関係ないか…)
留三郎は口では貴族としての在り方を語るけれど、感覚は寧ろ作兵衛のような俗に言う一般市民に近い。
留三郎は格式の高い食満家の時期当主であり、自分の主人だ。
本来なら相手にもされないような関係の留三郎と作兵衛だが、彼はいつも気さくに話をしてくれた。
その人間性に惹かれて、作兵衛は留三郎の従者となる事を選んだ。
最初は従者はいらないと言っていた留三郎だったのだが、作兵衛の熱い思いに負けて今に至る。
だが、やはりお顔とお金は羨ましいと作兵衛は思った。
そして、留三郎の話はまだ続く。
「でも、これは大層難しい。女は自分を偽るからな。『悪くない』を『好きだ』に置き換え、『打算』を『愛』と言い換えるんだ。しかも、たちの悪い事に、自分でも本心を偽っている事に気づかないでるんだ」
「そうなんですかっ!?」
ここまで留三郎が考えに、作兵衛は驚いた。
女とはそういうものなのかと。
そして、留三郎はいつもそんな事を考えながらいたのかと。
だからこそ、留三郎はモテるにも関わらず、あまり異性と付き合う事をしないのかと作兵衛はようやく納得した。
こんな事を話ながらも、二人の足はゆっくりだけど、確実に善法寺家に向かっていた。
けれど、家の近くまでは辿り着いたのだけど、その先が曖昧でわからなかった。ここらは田舎で人通りもあまりなく、二人は道を聞く為に人を探して歩いていた。
すると、その途中で三人の奇抜な格好をした男達に出会った。男達は大きな羽の付いた鍔の広い真っ赤な帽子を被り、それと揃いのベスト。白いワイシャツに白いズボン。はいているブーツまで白という格好だ。
こんな揃いの普段着でいる事は考えにくいから、劇団員か何かなのだろう。
だが、さっきから彼等は声を荒げ、会話の端々に『何処へ行った!?』、『縛り首だ』と物騒な言葉を並べ、落ち着かない 様子で辺りを見渡し、誰かを探しているようだが、人を選んでいる暇などなかった。
「あぁ、そこの…。善法寺家の屋敷は何処にあるかわかるか?」
作兵衛が一人の男に声をかけた。
だが、振り向いた男はとぼけた顔でこう言った。
「さぁ、俺達は流れ者の旅芸人ですからね。この辺りの事には疎いんで。あ、お前知ってるかー?」
知らないと言った男は、今度は別の男に話を振る。
「あぁ、領主様の御屋敷ならこの道を真っ直ぐ行って、ユグドラシルという木の所を右に曲がった先ですぜ」
話を振られた男は道を指指しながら教えてくれた。
だが、男の言葉の中に聞き慣れない単語が混じっていた。
「…ユグドラシル?」
「えぇ、何でもこの村の御神木みたいで。毎年、北の真ん中星が一番高くなる星祭りの日にユグドラシルの下で愛を誓い合った恋人達は、永遠に幸せになれるという伝説の木ですよー」
と、男は身振り手振り大きく、楽しげに話をしながら、留三郎の肩を叩く。
話を聞く留三郎は迷惑そうに顔を歪め、相変わらず腕を組み、眉間には深いシワ。
口は真一文字に固く閉じられ、さほど興味がないようだ。
「それで、今日は星祭りの日。俺達はその余興で連れてこられたって訳だ」
と、男は持っていたウクレレで簡単な音楽を奏で、深く一礼する。
「だが、揉めていたのは何故だ?」
だが、余興でここにいる男達が何故こんなにも怒っているのか。
作兵衛が聞くと留三郎もそれには興味があるのか、腕は組んだまま視線は男達に注がれていた。
「そうなんですよ!俺達の芝居を書いてる劇作家先生がいなくなっちまったんです」
「居なくなったっ!?」
「それも結末を書かずに。だから、俺達途中までの稽古ばかりで…」
そう語る男の顔は暗い。
「それはまた…。あ、でもその話はどんな内容なんだ?」
「それが大変に込み入った話で、ひねくれ者の花嫁候補と花婿候補が各々召使いと入れ替わって、相手を観察するという話で…」
と、男が観察するという動作を作りながら説明をしていると、留三郎はぽそり呟いた。
「……入れ替わりか、なるほど…」
「ご主人様、どうされたんですか?」
「悪くない。いや、いいアイデアだ」
さっきまで重い空気を発していた留三郎の表情がパッと明るくなった。
「何がいいんですか?」
「つまり、俺とお前が入れ替わる。お前が主人で俺が従者」
留三郎は作兵衛の持っていた自分のトランクを奪う。
「そして、花嫁に近づく。すると花嫁はお前を俺だと思ってしおらしく振る舞うだろう。だが、従者の俺にはその態度次第でこの女の素顔がわかるという段取りだ」
留三郎は楽しそうに笑い、今度は作兵衛にトランクを投げ返す。
だが、それを受け取った作兵衛の顔は引きつっていた。
もう聞かないでもわかる。留三郎はその芝居を自分達で本当にやってしまおうと考えているのだ。
きっと止めでもこの人は止まらない。
そして、作兵衛には選択権などないのだ。
「ですが、私に貴族様のフリが出来るでしょうか…?」
「大丈夫だ。半分貴族でない俺にも出来ている事だ。背筋を伸ばして、偉そうにして、言葉少なくしてりゃぁいい」
留三郎はニヤリと口元に笑みを浮かべた。作兵衛は留三郎の言葉に乗り、自分なりの貴族っぽいポーズを決めてみる。
「こんな感じですか?」
「あ、あぁ。いい感じだ」
何となく留三郎の歯切れが悪い気がしたが今は気にしない事にする。
それに、留三郎に誉められたら何だか出来るような気がしたのだが…。
「あぁー!」
さっきまで自信に満ち溢れていた作兵衛の表情が一変した。
「どうした?」
「もし、ご主人様お得意のダンスを踊れと言われたら…。俺、ダンスは苦手なんですよー!」
作兵衛は頭を抱え、落ち着きなくグルグル歩き回っていた。
でも、留三郎は動じない。
「大丈夫だ、作兵衛」
そう言うのだ。
「何が大丈夫なんですかっ!?」
「そんなもん顔で踊ればいい」
「顔で!?」
留三郎の言ってる事が全く理解出来ず、作兵衛の頭はさらに混乱した。
「さぁ、行くぞ。すぐに衣装の交換だ」
留三郎は笑顔で歩き出す。その表情はワクワク感に満ちていた。
「あぁ、ご主人様!待ってくださいよー」
作兵衛は慌てて留三郎を追いかけるが、途中で荷物を忘れた事に気がついて猛ダッシュで戻る。
幸いまだ荷物は自分で確認出来る所にあったから取られずには済んだ。
作兵衛は荷物を抱え、足取りの軽い留三郎の背中に向かって叫ぶ。
「どうやって顔で踊るか教えてくださいぃー!」
その声は何処までも響き 、作兵の目は涙に滲んでいた。
そう言って主人の荷を持ち、腕を引くのは従者の作兵衛だ。
「作兵衛、そう急ぐな」
腕を引かれるのは主人の留三郎。
「でも急がないと約束の時間に間に合わないですよっ!」
と、作兵衛は留三郎の少し前を歩き焦っていた。二人は時間に少々遅れているのだ。
物事は必ずしも思い通りにいくものではない。
予定をたて、丁度いい時間に家を出たとしても、自分ではない第三者のトラブルに巻き込まれる事がある。
そう、思いも寄らないトラブルに二人は巻き込まれたのだ。
そうでなければ遅れる事はなかった。
何故なら、前日の昼間から留三郎は目的地までのルートを調べていたからだ。作兵衛にやらせてもよかったのだが、どうも自分で調べなければ気が済まなかった。
そして、何が起きても対応出来るようにといろいろなパターンを考え、今はその中の一つを使ってきているのだけど、どうやっても間に合いそうもない。
幸先の悪いスタートだ。
いつもならそれでイライラする留三郎なのだが、ここまで調べ、時間に煩い筈の彼に急ぐ様子はなかった。
「そんなもの、待たせておけばいいだろ」
と、投げやりなのだ。
(ご主人様にしては珍しいな…)
作兵衛はそんな事を声に出さずに内心呟いた。
そして、この旅路に留三郎の気分が乗っていない事もわかっている。
さっきからずっと重いため息をついていたからだ。
「まぁ、こっちは公爵、あちらは伯爵ですが…、そんな事言わないでくださいよ。ご主人様らしくないです」
「そうは言ってもな、俺はこれから品定めされるんだ。気にいらねぇ…」
「伯爵様の娘、伊作様の為に三人の花婿候補を集めて、その中から一人を選ぶんですよね?」
「そうだ。そして俺もその求婚者の一人という訳だ。バカバカしい話だろ」
腕を組み、眉間には深いシワを寄せ、留三郎はふぅとまた小さく息を吐いた。
この結婚話は留三郎の意思ではない。食満家と善法寺家は貴族だ。格式は食満家の方が上だが、長い付き合いがあり、現当主同士も仲がいい。家は離れているがわざわざ時間を作って酒を飲み交わす事もある。
そして、この話はその酒の席で、留三郎のいない所で決まってしまったのだ。
勿論、留三郎は反対したが、結局その花婿選びに参加する事になり今に至る。
だが、食満家がこうするには理由があった。
作兵衛がわかるのだ。留三郎もそれを十分わかっている。
だから、気は進まなかったが最終的に当主の命令に従った。
それに、候補は自分を含めて三人。
選ばれる可能性は三分の一の確率なのだ。
そう考えて留三郎はここにいるのだけれど、やはりこうなるに至った動機が気に入らないらしい。
「でも仕方ないですよ。善法寺家は田舎領主とはいえ豊かな土地を持つお金持ち。もし、ご主人様が無事お婿さんに選ばれたら、格式ばかり高くて顰蹙財政の我が食満家も安泰。その上、善法寺家の令嬢、伊作様はかなりの美女との噂の方。お金とお顔が一気に入るというチャンスと考えれば、急ぐが得ってもんですよ」
「……作兵衛、そういう問題じゃないんだ。それにお前は間違ってる」
留三郎のため息はますます深く重い。
「何がですか?」
「お顔もお金は儚い物だ。大切なのは本質、本当の姿だ。外見や肩書きじゃなく本当の姿を見極め、我が食満家に相応しい妻を娶る事が貴族の資性としての義務なんだ」
「はぁ、義務ですか…」
貴族としての資性は貴族ではない作兵衛にはわからない。
お金とお顔が揃っているなんて、とそんな物とは無縁な作兵衛は思う。
だが、留三郎は肩書きを気にしない男。
一般市民が貴族のような贅沢を羨むように、貴族である留三郎は一般市民の生活に憧れというのを抱いているのか。
(あーでもこの人はそんな事関係ないか…)
留三郎は口では貴族としての在り方を語るけれど、感覚は寧ろ作兵衛のような俗に言う一般市民に近い。
留三郎は格式の高い食満家の時期当主であり、自分の主人だ。
本来なら相手にもされないような関係の留三郎と作兵衛だが、彼はいつも気さくに話をしてくれた。
その人間性に惹かれて、作兵衛は留三郎の従者となる事を選んだ。
最初は従者はいらないと言っていた留三郎だったのだが、作兵衛の熱い思いに負けて今に至る。
だが、やはりお顔とお金は羨ましいと作兵衛は思った。
そして、留三郎の話はまだ続く。
「でも、これは大層難しい。女は自分を偽るからな。『悪くない』を『好きだ』に置き換え、『打算』を『愛』と言い換えるんだ。しかも、たちの悪い事に、自分でも本心を偽っている事に気づかないでるんだ」
「そうなんですかっ!?」
ここまで留三郎が考えに、作兵衛は驚いた。
女とはそういうものなのかと。
そして、留三郎はいつもそんな事を考えながらいたのかと。
だからこそ、留三郎はモテるにも関わらず、あまり異性と付き合う事をしないのかと作兵衛はようやく納得した。
こんな事を話ながらも、二人の足はゆっくりだけど、確実に善法寺家に向かっていた。
けれど、家の近くまでは辿り着いたのだけど、その先が曖昧でわからなかった。ここらは田舎で人通りもあまりなく、二人は道を聞く為に人を探して歩いていた。
すると、その途中で三人の奇抜な格好をした男達に出会った。男達は大きな羽の付いた鍔の広い真っ赤な帽子を被り、それと揃いのベスト。白いワイシャツに白いズボン。はいているブーツまで白という格好だ。
こんな揃いの普段着でいる事は考えにくいから、劇団員か何かなのだろう。
だが、さっきから彼等は声を荒げ、会話の端々に『何処へ行った!?』、『縛り首だ』と物騒な言葉を並べ、落ち着かない 様子で辺りを見渡し、誰かを探しているようだが、人を選んでいる暇などなかった。
「あぁ、そこの…。善法寺家の屋敷は何処にあるかわかるか?」
作兵衛が一人の男に声をかけた。
だが、振り向いた男はとぼけた顔でこう言った。
「さぁ、俺達は流れ者の旅芸人ですからね。この辺りの事には疎いんで。あ、お前知ってるかー?」
知らないと言った男は、今度は別の男に話を振る。
「あぁ、領主様の御屋敷ならこの道を真っ直ぐ行って、ユグドラシルという木の所を右に曲がった先ですぜ」
話を振られた男は道を指指しながら教えてくれた。
だが、男の言葉の中に聞き慣れない単語が混じっていた。
「…ユグドラシル?」
「えぇ、何でもこの村の御神木みたいで。毎年、北の真ん中星が一番高くなる星祭りの日にユグドラシルの下で愛を誓い合った恋人達は、永遠に幸せになれるという伝説の木ですよー」
と、男は身振り手振り大きく、楽しげに話をしながら、留三郎の肩を叩く。
話を聞く留三郎は迷惑そうに顔を歪め、相変わらず腕を組み、眉間には深いシワ。
口は真一文字に固く閉じられ、さほど興味がないようだ。
「それで、今日は星祭りの日。俺達はその余興で連れてこられたって訳だ」
と、男は持っていたウクレレで簡単な音楽を奏で、深く一礼する。
「だが、揉めていたのは何故だ?」
だが、余興でここにいる男達が何故こんなにも怒っているのか。
作兵衛が聞くと留三郎もそれには興味があるのか、腕は組んだまま視線は男達に注がれていた。
「そうなんですよ!俺達の芝居を書いてる劇作家先生がいなくなっちまったんです」
「居なくなったっ!?」
「それも結末を書かずに。だから、俺達途中までの稽古ばかりで…」
そう語る男の顔は暗い。
「それはまた…。あ、でもその話はどんな内容なんだ?」
「それが大変に込み入った話で、ひねくれ者の花嫁候補と花婿候補が各々召使いと入れ替わって、相手を観察するという話で…」
と、男が観察するという動作を作りながら説明をしていると、留三郎はぽそり呟いた。
「……入れ替わりか、なるほど…」
「ご主人様、どうされたんですか?」
「悪くない。いや、いいアイデアだ」
さっきまで重い空気を発していた留三郎の表情がパッと明るくなった。
「何がいいんですか?」
「つまり、俺とお前が入れ替わる。お前が主人で俺が従者」
留三郎は作兵衛の持っていた自分のトランクを奪う。
「そして、花嫁に近づく。すると花嫁はお前を俺だと思ってしおらしく振る舞うだろう。だが、従者の俺にはその態度次第でこの女の素顔がわかるという段取りだ」
留三郎は楽しそうに笑い、今度は作兵衛にトランクを投げ返す。
だが、それを受け取った作兵衛の顔は引きつっていた。
もう聞かないでもわかる。留三郎はその芝居を自分達で本当にやってしまおうと考えているのだ。
きっと止めでもこの人は止まらない。
そして、作兵衛には選択権などないのだ。
「ですが、私に貴族様のフリが出来るでしょうか…?」
「大丈夫だ。半分貴族でない俺にも出来ている事だ。背筋を伸ばして、偉そうにして、言葉少なくしてりゃぁいい」
留三郎はニヤリと口元に笑みを浮かべた。作兵衛は留三郎の言葉に乗り、自分なりの貴族っぽいポーズを決めてみる。
「こんな感じですか?」
「あ、あぁ。いい感じだ」
何となく留三郎の歯切れが悪い気がしたが今は気にしない事にする。
それに、留三郎に誉められたら何だか出来るような気がしたのだが…。
「あぁー!」
さっきまで自信に満ち溢れていた作兵衛の表情が一変した。
「どうした?」
「もし、ご主人様お得意のダンスを踊れと言われたら…。俺、ダンスは苦手なんですよー!」
作兵衛は頭を抱え、落ち着きなくグルグル歩き回っていた。
でも、留三郎は動じない。
「大丈夫だ、作兵衛」
そう言うのだ。
「何が大丈夫なんですかっ!?」
「そんなもん顔で踊ればいい」
「顔で!?」
留三郎の言ってる事が全く理解出来ず、作兵衛の頭はさらに混乱した。
「さぁ、行くぞ。すぐに衣装の交換だ」
留三郎は笑顔で歩き出す。その表情はワクワク感に満ちていた。
「あぁ、ご主人様!待ってくださいよー」
作兵衛は慌てて留三郎を追いかけるが、途中で荷物を忘れた事に気がついて猛ダッシュで戻る。
幸いまだ荷物は自分で確認出来る所にあったから取られずには済んだ。
作兵衛は荷物を抱え、足取りの軽い留三郎の背中に向かって叫ぶ。
「どうやって顔で踊るか教えてくださいぃー!」
その声は何処までも響き 、作兵の目は涙に滲んでいた。
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